 |
|
|
|
|
|
| |
今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。 |
|
|
| |
|
|
|
|
 |

第50回 :
家を買うことにした: 3回目のオファーを出す前に
小雨のぱらつくどんより灰色の空の下、見に行った家は売りに出されて1日目だったため、まだ準備が出来ていないようだった。この家は売りに出されてるのよ〜、ということを世間に知らしめるための不動産屋の名前入りの立て看板を、家の前に穴を掘って建てている真っ最中。通常、売りに出されている建物は特別な装置で施錠されている。物件をお客に見せる際、リアルターや不動産屋は解錠して中に入るのだが、その鍵自体がまだ設置されておらず、インターホンを鳴らしても誰も出てこない。まだ早すぎたのかな?
そういえばこの地域には何度か足を運んだことがあったな。写真で見ると、家の裏には小川がせせらぎなかなかいい雰囲気だ。ダンナに見せると是非実物を見に行きたいととても乗り気で意気揚々と出かけたのだった。実物は写真と違い、傾きかけたオンボロな建物だったので、リアルター共々思わず1度通り過ぎてしまったくらいである。確かに家の裏は小川が流れ、緑溢れる平和な景色であったが、問題はその一帯の地盤が脆いらしく、川がある方向に向かって家が傾いていることであった。
「何年か後にはあの建物自体が川に向かって落っこちて行くのかねぇ?」
とダンナと顔を見合わせたものの、この条件だけに値段はお手頃だった。というよりも、やがてひっくり返るとわかり切っている家に誰がカネ出すんだよ〜。直せば生き返る建物修理と違って、地盤が弱いのはどうにもならない。
1軒目の物件の中には入れないようだったので、とりあえず次の所に移動した。ここは本日の本命であった。3ベットルームに暖房はガス。バスルーム1つに車のスペースは1台分だが立地条件がよい。厳密に言うとフリーウェイからちょと遠く、本来のターゲットからは外れた地域だったが、何せ予算が予算だし、その辺の家は数日で飛ぶように売れてしまう。フリーモントまでチャリンコで行けるし、聞いた話によると近くにモノレールも通る予定らしい。まあ、その手の公共事業は計画通りに行かないのは世の常であるから10年後に開通しているかどうか、はたまたその計画自体怪しいと個人的に思っているのだが、家を売りに出す時までには土地の価値がうまく上がるかもしれない、と不動産についての素人の浅知恵をあれこれ巡らす私であった。ただし、あまりに修繕が必要な家だと困るので、その辺はしっかり見極めなければ。先の2軒のオファーから学んだ経験を無駄にしてはいけない。
典型的なシアトルにある古い家の作りで1920年築だという。うーん、古い。屋根の張り替えの心配はないようだ。隣やお向かいの家やその庭もこざっぱりし、手入れも行き届いている様子。将来のお隣さんはきちんとした家であるに越したことはない。
入ってすぐのフロアリングの部屋には暖炉がしつらえてあり、テレビやソファが置かれリビングルームとして使われているようだった。その隣りの小さめの部屋にはダイニングセットが一式。この手の古い家はキッチンとダイニングルームが離れていることが多い。もう少し新しい家になるとキッチンとダイニングルームがカウンターで仕切られているデザインが多いようだ。
うっ、キッチンに皿洗い機がない!これは怠慢主婦としてはちょっと残念だが仕方ない。夕飯後の皿洗い係は私じゃないからいいや。小さいながら朝食用のちょっとした椅子とテーブルを置くスペースがあり、その周りの壁紙は60年代風の花柄。1階にある唯一のバスルームはこじんまりとしていて、バスタブと向き合って設置された洗面所との間の空間がずいぶん狭く、まるで日本の1人暮らし用アパートの「ユニットパス」を思い出させた。
2階の天井はダンナの頭がつっかえない程度に高く、合格。ドアで完全に仕切られているわけではないが、広い1つの空間が何となく2つに分かれており、これらが2ベットルームと数えられているようであった。2つの部屋(?)の間にはこれまたドアのないクローゼットらしき物置用空間が2つあり、カーテンで中身が隠されていた。何だか変な間取りである。もしこの家に住むことになったら2階はどうやって使うのだろうか?私たちが1階のベットルームを使うとして、あと1つは来客用、もう1つはダンナの仕事兼私のパソコン部屋、と考えていた。出来れば部屋の区切りとしてドアがあった方がいいんだけどなあ。
シアトルの家をずいぶん見て回ったが、こういう現代の生活にマッチしない、現代のライフスタイルで生きている私から見るとちょっと奇妙な間取りが多いようだ。この大きさの家だと2人暮らしには十分だが、もし将来家族が増えるとなると、ちょっと手狭になるかもしれない。現段階で、地下はコンクリート剥き出しの物置スペースと化しているが、部屋としてリフォームすることも可能ということなので、その点少しは融通が効くようだが。
こんな築80年以上、3ベットルーム、1バスルーム、ノースゲートとダウンタウン・シアトルの間の地域、治安もそこそこよく、かつ状態のいい家を見つけるとなると、私たちが物件を探しまくっていた当時、ぶっちゃけた話、300K以下で見つけるのは難しいか、激戦区。2ベットルームの小さな1戸建てでデカイ道路に割合近くても、グリーンレイクが近いと350Kはザラだった。
今回見学した家は売り物件リストに上がって今日が初日。何となくオファーが殺到しそうな家だ。その辺に充分敏感なリアルターが私たちのまんざらでもない気配を察し、いつもの常套句で攻めてきた。
「どうしますか?オファー出しますか?」
イケイケ・ムード、いつでも戦闘準備オーケーのリアルターとは対照的に、ダンナは浮かない表情である。彼がこの家を気に入っている様子は感じるが、オファーを出す時はいつも緊張してすぐにGOサインが出せないのである。迷っているうちに他のオファーが入っちゃいますよ、と言外にリアルターが急かすのを感じた。私もその通りだと思ったが、とにかくダンナは今日中に返事をするから待ってくれ、という。結局その場で明確な返事を出さず、1度帰宅することになった。
あ〜、先にオファーを出す人がいませんように、と実は気が気ではなかったが、あまり急かすのもよくないと思い、とりあえず日課となってしまった新しい物件リストをインターネットでチェックしていた。すると、おっ、フリーモントに300K以下でお手頃な物件が出ている。これも1920年築だが、元々この家を建てた一族がずっと住んでいたそうで(つまり過去に売り出されたことがない)、どうやら手入れも行き届いているようである。調べてみると少々大きな道路に面しているようだが、なかなか興味深い場所である。ヒッピーな
"The Center of the Universe" (とフリーモントにある標識に書いてあった)に住むなんて面白そうじゃないの。
ダンナもかなり強い興味を示しつつ、しかし、今日見た物件の返事もしなければならず、グダグダしていた。あ〜、はっきりせ〜よ〜。
「とにかくフリーモントに見に行ってから決めよう。そこからリアルターに電話して、今日見た物件にオファーを出すか、フリーモントの方に興味があるか決めよう!」
オッシャー、あたしが運転してやるから行こうぜ。急かすのはよくない、といい人ヅラをしておきながら、結局はダンナを引きずるように車に乗せたのは私であった。運転嫌いの私が運転を買って出るなんて滅多にないぞ。今の私たちにぐずぐず迷ってる時間はないのだ。どうせ家の中は見学できないけど、外から見ただけでだいたい感じはつかめるし、あとで後悔するより40分のドライブなんてたいしたことなくてよ!(嫌だけど・・・)ちゃんと納得してからオファーを出せばいいじゃないか。
こうしてダンナを助手席に押し込み、落ち行く夕日がレイク・ワシントンの水面を照らすのを横目に、私はシアトルへ車をすっ飛ばした。
(つづく)
注)当ページに記載されている内容は個人の一意見です。この情報に基づいて行動した結果なんらかの損害が発生した場合においても、執筆者およびジャングルシティは一切責任を負いません。記載された情報を活用される場合は、あらかじめ専門家に照会するなど必要な確認を行った上、ご自分の責任で判断していただきますようお願い申し上げます。
|
 |
|
 |