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  今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。    
       


第5回 : Rob the cradle


私はずっと「結婚するなら絶対に年上の人がいい!」と思っていた。年上の人なら私がわからないことがあってもアドバイスしてくれたり2人で話し合って何でも事を進めていけるのではないか?と思ったからだ。ありふれた表現だが、「頼りがいのある人」というやつだ。そして、しばらくは仕事をして、子供を生んだ後に在宅勤務ができるようなキャリアを積みたいので、結婚は30代にしよう、と考えていた。

が、しかし、 「現実と理想は違うのよ」 という言葉を裏付けるかのように、今の私は存在している。20代半ばでアメリカ人と結婚、英語が上達しなければキャリアもクソもない。しかも、ダンナは3才年下、ときた。我ながら自分の無計画さにあきれてくる.......... 。

日本では芸能人が年上の女性と結婚するだびに「年上妻」と騒がれ、テ レビのワイドショーでは「最近流行りの年上妻について検証する!」と いう内容の特集が組まれる。一般的に、ご主人が年上のご家庭が多く、奥さんが年上の場合、縁の下の力もち的存在で、旦那様を叱咤激励しつつも支える、いわゆる「あげまん」というイメージが強いようだ。ではアメリカではどうなのだろう?

うちのダンナのステップファーザーは、やたらに日本の文化、風習に詳しい。かつてお茶、禅をたしなみ、家のあやゆるところに仏陀の仏像や ら浮世絵やらが飾ってあり、飼っている猫の名前は「スシ」と「サケ」ときている。

そんな彼がある日私に言った。

「日本ではhusbandが年上なのが一般的なんだろ?」

にやにや、いや、ニコニコと笑顔で尋ねてきた。それは事実だけど、それが何だ?

「アメリカでは年下のhusbandと結婚することをRob the cradleというんだよ」

ろぶ だ くれーどぅー??なんだそりゃ?

「つまりcradleは赤ちゃんの寝ているベット(ゆりかご)で、それを盗む ということだよ!」

そこでわはは、と彼は愉快そうに笑った。Rob the cradle..........そうか。あたしは彼らのかわいい赤ちゃんを盗んでしまったということか。しかし、さすが表現のおおげさなアメリカだけある。3才年下のダンナもゆりかごで眠る赤ちゃんになってしまう。確かに彼はいつもおかーさんに

「Mom!」

とすり寄ってはハグハグと抱き合い、おかーさんも

「My sweet honey!」

とかわいがっているので、まんざらはずれてもいない。最初は

「20才過ぎて何やってんだこの親子は。気持悪う......」

と思い、こいつマザコンか?と疑ったもんだが、これも文化の違いというものだろう。もし日本人のダンナがこういうことをやろうものなら、マザコンと疑っても誰も異議は唱えないと思う。

さて、実は先日、念願の2人でのアパート暮らしが始まった。わーい!ダンナの方ははじめての2人きりの生活、責任感、日本人年上妻からのイジメに1人で耐えなければならないという思いから、胃の痛い日々が続いたようだが、私のほうはもちろんウキウキだった。

そんな私に彼のおかーさんが言った。

「年下のhusbandのことを英語でRob the cradleというのよ」

気のせいかもしれないが、その響きは彼のステップファーザーのようなからかう響きというよりも、むしろ切ない響きであった。そりゃそうだ。天塩をかけて育てた可愛い息子が、突然あらわれた外国人 の年上の女にとられちゃうんだもんなあ。母親としてはちょっぴり寂しいに違いない。 私は心の中で、

「すいませんが、おたくの息子さんを盗ませて頂きます」


■ ■ ■

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第 6回 コミュニケーションのデジタル化
第 5回 Rob the cradle
第 4回 We are in the same boat
第 3回 言葉摩擦
第 2回 気遣いスイッチ
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