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  今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。    
       


第48回 : 家を買うことにした: 強気な売り手


建物調査の結果、デッキの基礎は一部腐りかけてるし、屋根は取り替える時期だし、地下室のシャワー室の壁は内部が腐っていたため、検査の最中にちょっと触っただけでぼっこり穴までしまった。

私たちはその全部を直せ、と要求したわけではない。リアルターが、全部の項目の修理を要求して売り主に悪い印象を与えると交渉がしにくくなる、ということで、屋根の件はあきらめて、デッキとその他の小さなところを7項目ほど選んで交渉に挑んだ。見つかった問題の半分ほどの修繕ヵ所である。

こんなに控えめなお願いをしたにも関わらず、どうやら売り主は家を修理する気はさらさらないらしい。売り主側は、クロージングコストを負担してあげるという条件で既に値引きに応じてあげたんだから、それ以上修理に金なんかだせるかい、というつれないお答え。嗚呼、まさに売り主ウハウハの売り手市場・・・。

とりあえず、住宅ローンを借りる予定の会社に、これらの修繕費も含んだ金額でローンを組んで、その修繕費は現金で出してもらうことはできるか、と聞いてみた。すると、
「そのような修繕ヵ所は、売り主側が請け負うのが当然でしょ。なんで買い手側のあんたたちがやらなきゃいけないの?とにかくそれらの費用はローンには組み込めないよ」
というそっけない返事がきた。そーだよねえ。私たちが売り手に無理な要求を吹っかけているわけじゃないよね。

まあ、売り手側の言わんとすることはわかるよ。できるだけ高く売りたいんだよね。これ以上金を出したくないのもよーくわかる。でもね、あたしたちもこんなてんこ盛りの修繕リストに費やす現金、ないです。その上、壁のアスべスト疑惑は、検査の結果は「クロ」。リアルターはそれでも大丈夫だ、大した問題じゃない、というが、政府から発表されている基準値を立派に超えているのだから、取り除かないことにはおちおち深呼吸もできませんよ。

何だか急に吹っ切れた。もう、いいです。ほかの家を探しましょう。付き合っていた相手がロクでなしだとようやく気づいてしまった、という感じである。どうしてあんな男に惚れちゃったのかしら。でももう私、気づいたの。あなたに期待していた私が馬鹿だったわ。さようなら。潔く男の元を去るかのように、私の気持ちは固まっていた。

ところが、売り手にとっては私たちの反応はかなり心外だったようだ。どんなに酷い仕打ちをしても私たちが黙って条件を飲むと思っていたらしい。ばかにすんな〜。自慢にもならないが、あたしたち夫婦は、正直すぎて世渡りベタで、駆け引きなんてもっとも苦手とする分野なのよ。リアルターが替わりに交渉してくれるとは言え、そんな横柄なヤツにいつまでも構ってられるか!ケッ。

売り主は3,000ドル現金を出すからそれで全部直してくれ、とご機嫌をとってきたが、そんなはした金じゃせいぜいベランダの土台の修理で使い果たしてしまうわ。シアトルの冬を考えたら、その前に古い屋根は張り替えたい。すると今度は、売り主側が業者を手配して屋根とベランダを直してあげる、ときたもんだ。こんなケチな人たちに家の引き渡しまでの20日間足らずの間に、テキトーに安く直されたんじゃたまらない。

もう何を言ってきても私の心を引き留めることはできませんよう。リアルターが言うことには、彼らが再度この家を売り物件リストに掲載する際、建物調査の結果を明記しなければならないそうだ。へへーっ、さまーみろ。これで私たちのような初心者バイヤーが彼らのような腹黒い売り手のカモになることはないだろう。調査代425ドルは痛かったが、少々割高の授業料だと思って諦めることとしよう。

「僕たちの気持ちはもう他の物件を探すことに向いている。だからこれ以上交渉するのはお互いに時間の無駄だと思うよ」
ダンナはリアルターにこの物件との「決別宣言」を告げた。珍しく潔い彼であった。どうやらアスベストの結果が出たところでふっきれたらしい。

義母は、
「家探しは狩りと同じよ!」
と言う。リストを朝一番でチェックし、これだ、と思う物件があったらすぐリアルターに連絡して見に行く「狙い撃ち」の姿勢が大事なようだ。そうか、農耕民族である私はおとなしすぎたのかもしれない。収穫の時が来るまでせっせと働き、いずれ努力が実る時が来るだろう、と思っていたが、狩猟民族相手にはもう少し過激に攻めなければいけないのだ。いや〜、勉強になります、お義母様。

この時点で家探しを開始してから約2ヶ月経過。アパートの賃貸契約終了まで残り15日あまり。当然のことながらあと15日で引っ越すのは無理なので、管理人に1ヶ月契約を延長してもらうように頼んだ。問題なくOKも出て、新たに家探しを開始することになった。あ〜、家を買うって面倒くさい。

(つづく)


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最終回 ふと気がつけば5年目
第53回 家を買うことにした "買った後の修理費"
第52回 家を買うことにした "もうこれでいいや"
第51回 家を買うことにした "3度目のオファー・2度目のインスペクション"
第50回 家を買うことにした "3回目のオファーを出す前に"
第49回 家を買うことにした "迷い"
第48回 家を買うことにした "強気な売り手"
第47回 家を買うことにした "2度目のオファー・初めてのインスペクション"
第46回 家を買うことにした "ふりだしに戻る"
第45回 家を買うことにした "初めてのオファー"
第44回 家を買うことにした "住みたい場所、見つけた"
第43回 家を買うことにした "物件を探し始める"
第42回 家を買うことにした "序章"
第41回 「2人単位」
第40回 「人の話を聞いてるの?」 (後編)
第39回 「人の話を聞いてるの?」 (前編)
第38回 「効率的」と「がさつ」の境界線
第37回 要はしつけ次第
第36回 新年の抱負は達成されるか?
第35回 ガイジンの私と移民局(その2)
第34回 ガイジンの私と移民局
第33回 里帰り
第32回 服を買いに行こう
第31回 ケーキ作りへのあくなき挑戦
第30回 I'm honest, but I'm not popular.
第29回 ダブルカヤック
第28回 イベント
第27回 オリンピック
第26回 これは・・・使えるな
第25回 今年の正月
第24回 お金に対する感覚
第23回 Pink slip
第22回 嫌われる国際結婚女
第21回 言い訳できないアメリカ
第20回 夏の生活
第19回 親知らずを4本抜いた
第18回 ライバル登場
第17回 アメリカのOtakuたち
第16回 ハイキング
第15回 シアトル化
第14回 私の家族との初対面
第13回 今年の正月は日本に行ってやるぞ
第12回 2人でカウンセリングに行きました
第11回 日本ぽい料理
第10回 人の嫌がることはしないようにね
第 9回 カタカナと正しい発音
第 8回 それ恥ずかしくない?
第 7回 良いサービス?悪いサービス?
第 6回 コミュニケーションのデジタル化
第 5回 Rob the cradle
第 4回 We are in the same boat
第 3回 言葉摩擦
第 2回 気遣いスイッチ
第 1回 国際結婚、はじまりはじまり・・・
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