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第47回 :
2度目のオファー・初めてのインスペクション
1軒目のオファーの家とはご縁がなかった、ということで、改めて他の物件を物色することにした。自分たちの住みたい家がかなり具体化してきたので、次々と物件を見て歩いた。2軒目のオファーを出すことにした家は、たまに行く中華料理屋のすぐ近くで、ダンナの友達もその近所で育ったこともあり、以前からちょくちょく出没していた地域だった。
今まで見学した物件の中で一番広々としたリビングルームと開放感のある高い天井、地下室も物置ではなく部屋として改装してあり、薄暗いもののテレビ部屋にはぴったり。1階にバスタブ・トイレ、地下にシャワーとトイレ。この価格帯で2つもトイレがある家は初めてであった。それくらい私たちの予算内で買えそうなシアトル市内の家は、大抵ちっこくてそして・・・ボロイ。
外壁もケバイ赤でも紫でもピンクでもなく、無難にグレー。
おっと、外観ばかりに捉われてならぬ。リアルターに確認したところによると、屋根は取り替えて間もない新しいものだと言うし、暖房もガス。立地条件もなかなかいいし、いいんでないの?前のオファーから1週間後という早業であった。
今考えるとここでよく考えるべきだった。どうしてこんな好条件の家が今まで売れなかったのか。この物件を見に来たリアルターたちが残していった名刺が、キッチンカウンターに山のように積んである、ということがどういうことを示しているのか・・・。その時の私たちは、他の人が先にオファーを出さないうちにどうにかしなくちゃ、と焦ってさえいた。やられる前にやらねば!
今回も、「あなたの提示した金額で買ってあげるけどクロージング・コストは出してね」、というせこいオファーを出し、せっせと流れ作業的に書類にサインし、契約の手付金の小切手を切り、あとは寝て待つだけ。
もう1人ライバルがいて、同じ日にオファーを出したようだが、どういう心境か知らないが売主は私たちと取引したい、と連絡してきた。うーん、結構我ながらせこいオファーだったと思うが、何でだろう。まあ、いいや。次は未知なるステップ、『インスペクション
(inspection)』が待っているのだ。買う前に建物の状態をプロに徹底的に調べてもらうのだ。もし何か壊れているところがあれば売主に、
「直してくれ〜、それか値下げしてくれよ」
と交渉せねばならぬ。スーパーのようにレシートがあれば返品できるのとは訳が違う、金額も違う。プロのインスペクターのお値段は425ドル也。安くは・・・ないが、しっかり調べてくれるなら将来の数千ドルの修理費自己負担の危険性よりも425ドルを選ぶわ。
ダンナの両親にこの物件について話すと、彼らはその週末に早速、家を物色しに行った。「あの家、屋根が古いんじゃない?軒下の雨樋が腐ってるよ。あれは取り替えないとだめだね。あとデッキの土台も結構古くて腐りかけてるところもあるから、修理しなきゃだめだと思うよ」
え?外から見ただけでそんなことがわかるの??でもリアルターは屋根は比較的新しいと言ってたよ。更に続けて、
「あと、外から見ただけだから確かじゃないけど、あの天井が気になる。よく見えなかったけど、ちょっとボコボコした感じだった?"Popcorn
acoustic ceiling" っていうんだけど、1960-70年代によく使われた素材で、アスベスト(asbestos)
を含むことから今では使われてないんだよ」
と言うではないか。
アスペスト・・・何か聞いたことがあるぞ。調べてみると、天然の鉱物繊維であるアスベストは発がん性の強い物質で、昔、理科の実験で使った石綿金網のあの白い綿の部分もアスベストの一種だそうだ。え〜、私が小学生の頃ガンガン使ってたぞ。今はもちろん使われていないが、アスベスト繊維を吸い込むと肺がんになる確率が非常に高いそうで、80年代のアメリカではその危険性が明らかになり、かなりの訴訟問題になったようだ。ダンナが小学校の時にも学校の壁にアスベストが使用されている、ということが判明し、壁を取り壊す大規模な工事が行われたという。うーん、古い建物の解体現場にはむやみに近づかない方がいいかもしれない。アスベストが使用されている可能性があるし、うっかり吸い込んだら恐ろしい。
それよりも何よりも、外から家をチェックしただけでそれだけ建物の状態をチェックできるとは、さすが百戦錬磨、年の功。私たちのようなひよっこ、生まれたてほやほやの初心者とは見る目が違うわ。いくら騙されまいとがんばって屋根だの土台だの細かいところをチェックしたつもりでも、見る目がまだまだ養われていない。全然自慢にならないけれど、私たちの目って立派な節穴だわ。
インスペクションの当日は、ダンナが急な会議で席を外すことができない、ということで私が立ち会うことになった。どう考えても、私なんかが行ってもまったく役立たずだと思うが、この際しょうがない。ダンナの両親はあんなことを言っていたが、まったく気のせいであってほしい、と思いつつインスペクターが作業する様子を静かに見守っていた。
「彼、いつになく生き生きしているように見えるんですが・・・・。」
リアルターが隣でボソッとつぶやいた。そんな検査にやりがいのある家じゃ困るんだよなあ。梯子で屋根の上に登り、入念にチェックしつつ何かをせっせと書き込んでいる様子は、確かにやる気マンマンという感じである。それは私の不安を一層かきたてた。
屋根から下りて私たちのところに来たインスペクターが言った。
「この屋根は古いから、もう取り替える時期だよ」
ビンゴ。やっぱりそうか・・・。屋根は取り替えたばかり、というのは嘘だったのだ。
続いてデッキの土台は所々腐っているので修理が必要、と腐っているヵ所を示しながら説明してくれた。更に皿洗い機は壊れており、地下室にある暖炉
(furnace) の定期点検をここ数年していなかったようで、取り付けられていた金網には2センチほどの厚さのホコリが積もっていた。更に地下室のトイレの壁はどうやら腐りかけていたようで、詳しく調べようと少し触っただけでぼこっ、と穴が開いた・・・。普通、そんな簡単に壁に穴なんて開かないよね。マンガじゃあるまいし・・・。
とにかく、インスペクションの結果欄には修理ヵ所が書ききれないほど記載された。うーん、屋根とデッキの修理だけでも軽く6,000ドルは超えるだろうなあ。インスペクターは記載された修理ヵ所を全部直すと、ざっと12,000ドルはかかるだろう言う。リアルターはそれほどかからない、とは言うものの、こんなに多くの修理ヵ所が見つかるとはさすがに予想していなかったようだ。
この辺でわかった。どうして訪問者がこれだけ多かったにもかかわらず、好立地条件にもかかわらず今まで売れ残っていたのか。誰もオファーを出さなかったのか。みんなこれらの問題を見破ってたんだよね、きっと。ああ、私としたことがうかつだったわ。
「屋根に続き、デッキの問題が見つかった時、もう終わった、と思いました・・・。確かにデッキは古いので修理が必要だとは思いましたが、土台が腐っているとは・・・」
え〜?あなたもデッキが要修理だって知ってたの?この間は一言も言ってくれなかったじゃないのお。そういうことは教えてほしかったわ。私たち夫婦は所詮、初めての家探しでその辺のことはよくわからないんだし。
もうひとつアスペストの問題が残っていたが、これは天井の一部を検査室に持ち込んで調べてもらうまでは何とも言えない。リアルターは大した問題じゃない、心配しなくても大丈夫、とあっさりしていたので、もしかして私たちが騒ぎすぎかもしれない、とも思った。でも、もし本当なら壁の撤去作業をしなければならないわけで、さらに修理ヵ所が増える。有害物質と一緒に暮らすなんていやだ〜。
修理ヵ所を全部直せ!というと売主側の態度が硬化し要求を突っぱねる恐れがある、ということで屋根の件はあきらめ、デッキの修理とその他小さなもの6〜7個を直してくれ、と書いてファックスを送った。でもなあ、売る側の態度として屋根とデッキの両方を直すべきだと思うんだけど。さらに屋根は最近取り替えただの嘘はつくし、何か信用できない相手だ。リアルターは、
「今は買い手市場です。ホント、買い手は強いですよ〜」
と言っていたが、どう考えてもあたしたち弱気なんだよね。本当に今は買い手市場なんだろうか。
とりあえず売り手側からの返事と、アスペスト疑惑の壁の結果を待つことにした。
(つづく)
注)当ページに記載されている内容は個人の一意見です。この情報に基づいて行動した結果なんらかの損害が発生した場合においても、執筆者およびジャングルシティは一切責任を負いません。記載された情報を活用される場合は、あらかじめ専門家に照会するなど必要な確認を行った上、ご自分の責任で判断していただきますようお願い申し上げます。
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