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今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。
第46回 : 家を買うことにした "ふりだしに戻る"
「お話したいことがあるので・・・・」
と、その夜、リアルターはやって来た。な、何だろう。他の人に先を越されたか?それともクロージングコストを出させようとしたもくろみが気に入らなかったのか?
ちなみにクロージングコスト(Closing cost)とは、家を購入する際のいろいろな経費(住宅ローンの手数料、火災保険、登記料、もろもろ)である。購入価格の交渉の際、
「私たちのクロージングコストを払ってくれたら、あなたの提示した価格で買ってもいいんだけどどう?」
とオファーをだしたのだ。ということはつまり、クロージングコスト分の割引してくれろ、ということだ。オファーの書類上は一見、あなた様の提示金額で買います〜、としておきながらクロージングコスト込み、と補足するのだ。なんだか割引クーポンの下に小さく細かく書いてある「但し以下の場合は除きます」という条件みたいに巧妙な手口ね、と思ったが、これはよく使われる手だそうだ。
「私たちのオファーは受け入れられました。ただ、Sellerさんの方なんですが・・・」
家にやってきたリアルターが言うには、売主が体調を崩し、彼らはこの家を売り他州に家を買い引っ越す予定だが、医者から引越しのようなストレスがかかる作業は1ヶ月間見送るように、と言い渡されたそうだ。しかし是非私たちと取引をしたいので、もし私たちが構わなければ1ヶ月間建物の引渡しを延長し、その分私たちのアパートの家賃1か月分とクロージングコスト全額を負担してもいい、ということだった。
この時点で私たちのアパートの賃貸契約は残り1ヶ月ちょっとに迫っていた。最近家を購入した友人は、本当に大丈夫なのか?オファーを出したあとインスペクションやら何やらで引越しまでに1ヶ月以上かかるんじゃない?と心配していた。リアルターは、
「買いたい家さえ見つかれば、1ヶ月もあれば余裕ですよ」
と言う。そうなのか?家を買うってそんなに簡単なのかい?
まあ、それが本当でも私たちへの気休めだとしても、とにかくアパートの賃貸契約は残り約1ヶ月。アパートの管理人には契約終了に伴い引っ越す旨を伝えてあった。その当時私たちの住んでいたアパートには空き部屋が何部屋かあり、入居者募集中だったが景気停滞に伴い、あまり状況は芳しくないようだった。管理人曰く、もしもう少し引越しが延びるようだったら早めに言ってね、とかなり融通がきくのはありがたかったが、できれば予定通りに引っ越したいと思っていた。
結局、この家は今回見送ることにした。ダンナが "Radiant Heating" が気に入らなかった理由もあるが、その他に壁の薄さも気になっていたようだ。
「今回はご縁がなかった、ということで」
やっぱりやめておきます、とFAXを送った。
しかし、売主さんも大変だなあ。確かあそこの家にはベビーベットがあったっけ。小さい子供を連れての引越しを控え、その上急に病気だなんて。他人に同情している暇はないんだけどね。でもあの家ならすぐ他に買い手がつくだろう、がんばってね。家を買うって、悲喜こもごも。他人様の人生をちらっと垣間見た気分であった。
早速、家探しは再開された。住みたい家が具体的になったところで、売り物件のリストを毎日チェックし、目星をつけたところをリアルターと見学に行った。
家を買うことになってたくさんの家を見学したけれど、やはりインテリアや飾り付けに気合の入った家が多いことに感心した。そう言えば、アメリカに来た時から気になっていたことがある。それは、夜になってもブラインドやカーテンを閉めない人が多い、ということだ。中が丸見えなのだが、その黄色い照明の下のインテリアもなかなか凝っているようである。ダンナにどうして皆夜になってもカーテンを閉めないのか?家の中が丸見えで恥ずかしくないのか?と尋ねると、
「何で恥ずかしいの?」
と言う。だって家の中全部丸見えだよ、丸見え。散らかってたら恥ずかしいじゃないの。ダンナ曰く、皆コーディネートした自慢のコレクションを見せたいのだという。ああ、そうなのねえ。
あまり人の家の中をジロジロ見たら悪いな、と思って見て見ぬふりをしていたのだが、見せたいっていうなら話は別よ。遠慮なくジロジロ人様の家を観察してみると、皆きれいにしてるんだよね。いろいろな小物のコレクション、きちんとフレームに納められ壁に飾られた絵や写真、定番のおみやげ、写真が印刷されたお皿、棚にところ狭しと飾られている置物。おいおい、地震がきたら落ちてこわれちゃうよ〜。あ、この辺は地震が少ないからいいのか。どうやってこのきれいな状態をキープしてるのかな。これだけたくさん置物があるとホコリを拭くのが大変そう。
ハロウィーンやクリスマスには、ここぞとばかり家の外も中も派手にデコレーションしてしまう。窓際のフランケンシュタインやドラキュラの人形は背後から薄暗い照明に照らされ、庭の木は電灯まみれになり、雪だるまやソリのでかい人形がドン、と庭に配置される。普段プラスチック製のピンクのフラミンゴが片足で立っている庭は、よりいっそう華やかになるのだ。
人気のあるところはどんどんオファーが入るので、新しい物件がリストにでると、気もそぞろにリアルターに連絡を取り、詳細を調べてもらった。一般公開用のリストには書いていないことがリアルター側のリストには書かれているのである。実はそれらがとても重要なのだ。"NEW" となっている物件の中でも、実は結局前回売れ残り、再リスティングされたために一般公開のリスト上では新着物件扱いとなっていたり、「うわー、立地はいいしこの家、お買い得だわ」と思いリアルターに調べてもらうと、屋根が古いから取り替えなくちゃダメ、など出費がかさむような修理ヵ所があったりする。毎日物件リストを見ているうちに、何となくわかってきた。まったく、油断ならないわ。
「こいつは怪しい。私は騙されなくてよ」
予算内でそれらの様々なトリックを見破り、まあ、これなら大丈夫かもしれない、という物件を見に行き、2軒目のオファーは10日以内に決行された。
しかし、この2軒目の家の売主がちょいと曲者だということを、私たちはまだ知る由もなかった・・・。
(つづく)
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最終回
ふと気がつけば5年目
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第53回
家を買うことにした "買った後の修理費"
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第52回
家を買うことにした "もうこれでいいや"
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第51回
家を買うことにした "3度目のオファー・2度目のインスペクション"
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第50回
家を買うことにした "3回目のオファーを出す前に"
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第49回
家を買うことにした "迷い"
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第48回
家を買うことにした "強気な売り手"
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第47回
家を買うことにした "2度目のオファー・初めてのインスペクション"
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第46回
家を買うことにした "ふりだしに戻る"
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第45回
家を買うことにした "初めてのオファー"
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第44回
家を買うことにした "住みたい場所、見つけた"
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第43回
家を買うことにした "物件を探し始める"
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第42回
家を買うことにした "序章"
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第41回
「2人単位」
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第40回
「人の話を聞いてるの?」 (後編)
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第39回
「人の話を聞いてるの?」 (前編)
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第38回
「効率的」と「がさつ」の境界線
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第37回
要はしつけ次第
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第36回
新年の抱負は達成されるか?
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第35回
ガイジンの私と移民局(その2)
■
第34回
ガイジンの私と移民局
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第33回
里帰り
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第32回
服を買いに行こう
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第31回
ケーキ作りへのあくなき挑戦
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