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今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。
第40回 :「人の話を聞いてるの?」 (後編)
"You should have been younger."
チャイニーズ・レストランへ行く車の中で、ダンナはのたまった。体型と顔は金さえあれば整形できる世の中だけど、年と身長は直そうたってできるもんじゃないのよ。しかも女に年の話題をふるなんて、なんて無神経なの! うきぃ〜、と殺気立ち、ありとあらゆる角度からダンナを責める思考回路がフル回転する一方で、泣きたくなるような感情もこみ上げ、胸が詰まった。学校に通って職を見つけ、落ち着いたら子供を作ろう、と日頃から今後の計画を話し合っていたはずなのに、もう若くないから諦めてさっさと子供でも作れ、ってことなのかな?
チャイニーズ・レストランではダンナの家族と落ち合い、何事もなかったように平静を装い、穏やかに夕食の時は流れた。車の中でのことは夫婦の問題だし夕食の後で話せばいいや、と割り切ろうにもモヤモヤが晴れない。いつものごとく、彼のステップ・ファーザーの持ち家推進委員会の回し者のような講義、その次はビジネス開講講座は続いた。彼には何度も何度も、「時が来たら行動を開始するけど今は興味がない」と言ってあるのに。
何かが、プチン、と切れた。
「人の話を全然聞いてないじゃない!何度も何度も説明したとおり、あたしは家なんかに興味ないしビジネスも今すぐ開く気はないいんだってば」
今まで押えていた感情が堰を切ったように流れ出した。彼の両親は私が急にキレたのでビビっている様子であったが、いつもおとなしい私が感情を爆発させたことで、私の発する緊急信号を受信したらしい。元心理カウンセラーと現役心理カウンセラーの2人は、早速カウンセリングモードに入った。この態度もあたしは気に入らない。あたしはあんたたちのクライアントじゃないのよ。誰もカウンセリングしてなんて頼んでないのに、あたしのことを何でもわかるような口調で話すのやめてよね。
「簡単に、もうそろそろ子供作んないの?なんて言うけどね、あたしにはあたしの計画があるのよ。何のために学校に行ったと思う?仕事を探して、それで落ち着いたらビジネスを始めるかもしれないし、子供を作るかもしれない。やってみなきゃわからない。とにかくあたしはちゃんと計画的に考えてるって何度も話したのに、あんたたち全然覚えてないじゃないの〜。どうして人の話聞いてないのよ!」
もう何もかもにいらいらした。レストランで家族に向かって涙と鼻水で顔をグチャグチャにしながら食ってかかるなんて、キレた時しかできない。私の人生の中で、こんな恥ずかしいことを公衆の面前でできるとは思わなかった。こうなったらこの際とことんやってしまえ。ダンナは滅多に感情を爆発させない妻が、東京で火炎放射しながら暴れまわるゴジラのように抑制のきかなくなっている姿を見て、明らかにビビっている様子である。狂った日本人妻ゴジラはそんなダンナの萎縮した様子さえ気に食わない。
「お義母さんに聞いてるんじゃないのよ!ダンナ、あんたに聞いてんの。あんたの両親がどう思うが何だっていいのよ。あたしが知りたいのはあんたがどう思ってるのか。あたしの話を聞いてないのは、あたしがあんたにとってそんなに大切じゃないってことなの?あんたが物事を忘れやすいのはわかってんのよ。それを差し引いても我慢ならないわ。だいたい、いい年して両親に手伝ってもらってんじゃないわよ」
滑舌絶好調、油が乗りに乗った私にお義母さんの決定的な一言が下った。 「わかるわ。この人たち(うちのダンナと彼のステップ・ファーザー)は、あなたの話だけ聞いていないわけじゃない。私の話も聞いてないわよ」
えっ?と一瞬怯む私に、続けて彼女は語った。 「いい?女性は家事・育児・仕事など複数のことを器用にこなせるけど、男性は一度に1つのことしかできないのよ。だから、彼らが何かを他の事をしている時に話しかけても、私たちが何を話したかなんて覚えてないの。あなたのイライラする気持ちはとてもよくわかるわ。でも生物学上の違いだと思ってあきらめたほうがいいかも・・・」
人の話を聞かない、という行動を男女の違いのせいにするのはちょっと納得がいかない。それでは彼らに絶好の言い訳を与えることになる。彼らが何度も同じ話をする度に、忍耐強く同じ受け答えをしなければならない、ということではないか。それはこの男たちに都合よすぎるよ〜。案の定、そのお義母さんの話を聞いてダンナはここぞとばかりに大きくうなずいている。 そういえば、"You should have been younger."の真相をダンナからまだ聞いていなかった。
「君は学校やこれからのキャリアを追い求めることで忙しいし、それが終われば子供を作って、僕たちはもっと忙しくなる。僕はもっと君と遊べると思ったのに、君はいつも忙しい。だから君がもう少し若ければ子供を産むまでの時間が今よりもっと長くて、2人で遊べる時間もたっぷりあったのに、と思ったんだ」
なるほどね。別に悪気のある言葉じゃなかったことはわかった。けれども、あたしは超能力者じゃないんだから、"You should have been younger."というほんの一文から、そこまでの思いはさすがに汲み取れないよ。
"I'm not good at English. My fist language is a computer programming language."
そうでしたか・・・。
1時間半にわたる叫びの時間は大団円を迎えた。結末に納得したか、と聞かれれば、どうしても男たちに甘すぎる結果としか思えない。恥をかなぐり捨て、ここまでキレた様子を表現しなければ私の気持ちに気付いてもらえないなんて疲れるなあ。しかし、最近は私がダンナに質問や相談を持ちかけたら、
「ちゃんと聞いてるよ。君の話が大して重要じゃない、なんて思ってないよ」
とおどおどしながら言い訳するので、まあ、それなりに効果があったということだろうか。
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最終回
ふと気がつけば5年目
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第52回
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第42回
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第41回
「2人単位」
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第40回
「人の話を聞いてるの?」 (後編)
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第39回
「人の話を聞いてるの?」 (前編)
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第38回
「効率的」と「がさつ」の境界線
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第37回
要はしつけ次第
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第36回
新年の抱負は達成されるか?
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第35回
ガイジンの私と移民局(その2)
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第34回
ガイジンの私と移民局
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第33回
里帰り
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服を買いに行こう
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