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  今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。    
       


第4回 : We are in the same boat


以前から聞いていたほど、初めて過ごすシアトルの冬は悪くない。
「あー、これから雨とくもりのどんよりした日が続くのねえ」
と 秋の初め頃には覚悟を決めていたのだが。

夏はほぼ毎週末ハイキングにでかけていたが、いくら例年よりは 天気がいいからと言ってハイキングには行けない。はて、週末は何しようか?

もし雨が降っている、またはどんよりとした曇空であれば、じゃあ、今日は家にいよう、今日は映画へと、それなりに予定がたつのだが、土曜日の朝に目が覚めるとぴかぴかに輝く朝日、青空が目にとびこんで来る時がある。これを見てしまうともうだめ。わたしたち夫婦の「どこかに行きたい病」 が始まってしまうのである。しかし、天気はよくても寒い。

そんなある日、ダンナが、
「ねえ、カヤックに行かない?」
(この日本語については前回の「言葉摩擦」を参照のこと) と私を誘った。おお、カヤック!学生の時、椎名誠の旅の本や、野田知佑というカヌーイストの本を読み、カヌーで旅をしたり、モンゴルで馬に乗ることを思い描いていた私にとって、何とも魅力的な響きだった。そのときは、まさかアメリカ人と結婚すると思ってもなかったけど、こんな形でチャンスが巡ってくるとは、人生何が起こるかわからないなあ。

ダンナの義理のお父さん(つまりおかーさんの再婚相手ね)は、20代の後半をセルボートの上で過ごした。彼はシアトルを出発し、太平洋を南下、ニュージーランド、インドネシア、そして香港まで旅をしたそうだ。そういうわけで、彼は以前カヤックもしていたが、今は誰にも使われないまま、そのカヤックは裏庭にひっそりとたたずんでいた。

濡れると寒いので、ゴーテックスのジャケットを着て、座席もすっぽ りとカバーで覆う。もちろんライフジャケットも着込む。2人乗りのダブルカヤックなので、大きくて重く、安定感もあるので初心者の私にも安心だ。

パドリングの仕方から教えてもらうが、前回の「言葉摩擦」でも書いたように、うちのだんなは腹がたつと故意に非常に不愉快きわまりない日本語を使う。思った通りに私が上達しない、行動しないと爆弾が落ちて来る。
「何やってるんだ!」「早くしろ!」
あたしにしてみりゃ、精いっぱいやっているし、なにしろ初めてなので、
「今、どういう行動をするべきなのか」
という状況判断がなかなか正確にできない。特に水上なので、注意を怠って何か起きたらもう遅い。冷たい水にぼちゃん。レイクユニオンならまだしも、もしピュージェットサウンドだったら、水温が低すぎて、落ちただけで命とりだ。泳ぐなんて以前の問題である。もたもたしていていると、それが彼を更にいらだたさせる。そしてがまんにがまんを重ねた私が、とうとうキレて怒る。
「そんなこと言ったってねー、できないのよ!あたしもがんばってるんだから、静かにしてよ!」
初めの2、3回のカヤックはいつもこのような感じだった。

ある晴れた日の日曜日、その日も私たちはレイクワシントンにカヤックにきていた。やはり(?)、その日もファイトに突入した。そこで、エキサイトする私にため息混じりにダンナの一言。
「英語でこういうのをWe are in the same boat.と言う......」
カヤックの上でファイトに突入した場合、どんなに
「もう話したくない!」
「ブン殴りたい」
「そんな言い方するんだったらお前になんか協力するもんか!」
と思っても、カヤックから離れることはできない。なんてったって、周りは 水。1人だけカヤックを降りてサヨナラー、はできない。私がパドルをボイコットして、彼への抵抗を示すことはできるけど、それだとなかなか進まないので、トイレに行きたくなったらやはり協力して漕いで上陸するしかないし、通常は彼の座席側に食料を積んでいるので、生意気な態度をとっているとお腹がすいても何も食べさせてくれない、という恐れもある。つまり、お互いに協力して、助け合い、両方が快適な気分になることが自分の 希望を叶える一番の近道であるということだ。うむむ......文字どおりWe are in the same boat.だ......ヤツめ、うまいこと言うなあ。悔しいけど.....。

かなり不愉快な思いをしたカヤックの始まりであった。何回か
「もうカヤックはやらない!」
と思ったときもあった。しかし、慣れてくるにつれて要領を覚えてきたこともあり、ケンカも少なくなった。お互いに景色を、カヤック自体を楽しめるようになってきた。やっと同じボートに落ち着いてきた、ということだろうか......。


■ ■ ■

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最終回 ふと気がつけば5年目
第53回 家を買うことにした "買った後の修理費"
第52回 家を買うことにした "もうこれでいいや"
第51回 家を買うことにした "3度目のオファー・2度目のインスペクション"
第50回 家を買うことにした "3回目のオファーを出す前に"
第49回 家を買うことにした "迷い"
第48回 家を買うことにした "強気な売り手"
第47回 家を買うことにした "2度目のオファー・初めてのインスペクション"
第46回 家を買うことにした "ふりだしに戻る"
第45回 家を買うことにした "初めてのオファー"
第44回 家を買うことにした "住みたい場所、見つけた"
第43回 家を買うことにした "物件を探し始める"
第42回 家を買うことにした "序章"
第41回 「2人単位」
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第38回 「効率的」と「がさつ」の境界線
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第36回 新年の抱負は達成されるか?
第35回 ガイジンの私と移民局(その2)
第34回 ガイジンの私と移民局
第33回 里帰り
第32回 服を買いに行こう
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第30回 I'm honest, but I'm not popular.
第29回 ダブルカヤック
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第26回 これは・・・使えるな
第25回 今年の正月
第24回 お金に対する感覚
第23回 Pink slip
第22回 嫌われる国際結婚女
第21回 言い訳できないアメリカ
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第18回 ライバル登場
第17回 アメリカのOtakuたち
第16回 ハイキング
第15回 シアトル化
第14回 私の家族との初対面
第13回 今年の正月は日本に行ってやるぞ
第12回 2人でカウンセリングに行きました
第11回 日本ぽい料理
第10回 人の嫌がることはしないようにね
第 9回 カタカナと正しい発音
第 8回 それ恥ずかしくない?
第 7回 良いサービス?悪いサービス?
第 6回 コミュニケーションのデジタル化
第 5回 Rob the cradle
第 4回 We are in the same boat
第 3回 言葉摩擦
第 2回 気遣いスイッチ
第 1回 国際結婚、はじまりはじまり・・・
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