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  今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。    
       


第38回 :「効率的」と「がさつ」の境界線


ダンナの両親と一緒に旅行へ行き2週間一緒に過ごすことになった。別居してから約2年半ぶりに、しばし共同生活を送ることになったのである。

「2週間、耐えられるだろうか・・・」

一抹の不安がよぎる。言い訳がましいようだが、私たちは今のところ穏やかな関係を維持している。しかし、自分の家族でさえ1週間が限界の私である。ただでさえ互いの要望が激しくぶつかり合う家族旅行。こんな不安を抱く私を誰が責められよう。

お義母さんは教養のある、親切な人である。しかし、私はひそかに彼女のことを「怪獣」と呼んでいる。言っておくが悪気はこれっぽっちもない(悪気たっぷりに聞こえるかもしれないが)。文字通り、彼女の通る道にはドッタンバッタン怪獣が通り過ぎたような騒音が鳴り響くのである。朝、例え彼女の寝室が1階であろうと、彼女が起きると2階にいてもわかる。ノシノシと廊下を歩く音と、「バターンッ!」というドアに何か恨みがあって八つ当たりしているのか?と疑いたくなるような騒音が響き渡る。同居していた当初、私はこれらの騒音にビクビクしていた。

「え?お義母さん、目覚めがよくないのかしら・・・」

と、どう考えても彼女が怒り狂っているようにしか聞こえなかった。うわ〜、近づかないようにしよう。触らぬ神にたたりなし。

ところが、うちのダンナときたらそんな騒音にもまったく動じない。私が何度も、

「ねえ、お義母さん、機嫌が悪いのかなあ?」

と心細げに尋ねても、涼しい顔で一言。

「おこってないよ」

さすがに息子であるダンナは慣れているらしい。でもねえ、私の今までに人生だと、このレベルの騒音を鳴り響かせる理由は「怒りを表現している」がダントツ1位なんだよ。

夕食の準備を手伝っていたときのことだ。私はJicamaという野菜の皮をむくように頼まれた。余談であるが、私が日本でりんごの皮をむくたびに私の母は、

「あんたが皮をむくと、食べるところがなくなる」

と嘆いたものだ。そう、私は大ざっぱな女なのだ。

その日、たのまれたJicamaの皮は皮むき器ではむきにくかったので、包丁であまり身を削りとらないように注意深くがんばっていると、お義母さんが様子をうかがいにやってきた。そしてひょい、とJicamaを私の元から取り上げ、ザックザックと皮も身も一緒に取り除いた。

ひえ〜、食うところがなくなる〜!

大ざっぱな私が他人にこんな思いを抱くなんて夢にも思わなかった・・・。一回り、いや、二回り小さくなったJicamaを手にお義母さんは、

「いい?社会人になってある程度忙しくなったら時間は有効に使わなくちゃダメよ。Time is money! 少しくらい厚く皮を剥いたって食べるところはあるんだから、そんなに時間をかけて丁寧に皮むきする必要はないのよ」

と熱弁を揮った。

アメリカに来る前から、自分はがさつな女だ、という認識はあった。それがアメリカに来てダンナの家族と暮らすようになった時、小さなことをバカ丁寧にする、とからかわれるようになった。サンドイッチを食べるたびに、

"She is scared of a sandwich!"

と言われるになった。ただ単に、中身がずり落ちないよう、なるべく手が汚れないようにして食べていただけであるが、彼らにとってはどうしてそんなに注意深くサンドイッチを食べるのか不思議だったようだ。手が汚れたら後で洗えばいいのよ、ということらしい。

「効率」と「がさつ」の違い。

これはかなり主観によるところが大きいが、いくら効率的でも、これ以上がさつになる自分には耐えられない・・・。逆に考えると、まだこのような考えを持っている自分がいてホッとする。いいのよ、私はひっくり帰っても上品な女じゃないけど、いくらラクでも足をバックリ開いて座るようながさつ度には到達しないように我が道を突き進むのよ!

そんな熱い決心を胸に旅行から帰り、日本人女性たちと雑談をしていたある日、私は谷底へ突き落とされるような感覚を覚えた。日本人の女性は人前で鼻をかまないそうである。そうなのか・・・。私、そういのは全然恥ずかしくないんだけど。鼻が垂れるよりいいと思ってたわ。ああ、やっぱり私も「上級がさつな女」へとすでに猛進中なのだろうか。これからの花粉症季節、気をつけなくちゃ。


■ ■ ■

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第38回 「効率的」と「がさつ」の境界線
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