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  今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。    
       


第37回 :要はしつけ次第


アメリカ映画やテレビでごみ捨てや芝刈りを手伝う子供の姿を見て、
「ああ、いいわね。アメリカの子供は親を手伝うなんて感心ね」
と思うかもしれない。

しかし、それは早合点である。

私の分析によると、
1.母親にうるさく言われて、半ば強制的にやらされている。
2.小遣い稼ぎ
この2つが主な理由である。考えてみてほしい。遊び盛りの子供が自ら進んで自由時間をそんな雑事に割くものか。部屋が汚れ放題でもゴミ箱がいっぱいになっても、リサイクリングが溜まっていても庭の草がぼうぼうに伸びていても、子供にとってはどうでもいいことなのだ。特に学校に掃除の時間がないのだから、親がうるさくいわなければ掃除の習慣なんて簡単に身につかないだろう。

次によく耳にするのがこれである。
「アメリカ人のダンナさんは家事を手伝ってくれていいわねえ。荷物持ってくれたり、ドアを開けてくれたりするんでしょ?やさしいわよねえ」
これも子供の手伝いに関する分析と同じである。
1.子供時代から母親にうるさく言われて、半ば強制的にやらされていた。
2.妻にうるさく言われて、半ば強制的にやらされている。

どうしてこういったことに考えが及んだかというと、話は結婚当初にさかのぼる。私は自分で持てるものは自分で持つので、ダンナが持ってくれなくても特に何とも思わなかった。ただ、私の両手が荷物でふさがってる時くらいドアを押さえてくれよ、という期待はあった。しかし、彼の家族と一緒に買い物へ行くと、ダンナは自ら進んで、または彼のおかーさんに頼まれると荷物を持ってあげているではないか。
「なんであたしにはやってくれないのに、おかーさんにはやさしくするのよっ!」
私はダンナに対する不快感を覚えた。日本人は文句言わないからいいと思ってるんじゃないでしょ〜ねぇ〜?そこである日、荷物を持つように頼んでみた。すると、
“Okay!"
私の下種な勘繰りとは裏腹に、作戦はあっさりと成功した。
おや?これはもしかして、私が今まで頼まなかったから持ってくれなかっただけなのか?

その後よーく観察してみると、彼のおかーさんが、
“Recycling day!"
とでかい声で叫ぶと、ダンナもめんどくさそうな顔をしながら、でもその日の夜にはちゃんとリサイクリングを仕分けていたし、車にある荷物運んでおいてね、と頼むとちゃんと運んでいた。しかし、私が何も言わないと自発的にやることもないし、控えめに頼むといつまでたってもパソコンの前を離れようとせず、おかーさんが頼んだ時と同じ効果が得られない。

そうか!これはもしかして、しつけ次第かもしれない。言われればやるんだから、ここは辛抱強くいくしかない。

それから私はしつけ作戦を開始した。リサイクリングと夕食の後片付けの習慣は子供の頃からのものなので、できないわけがない。ただ、私がさっさとやってしまうと味をしめてこの次からやらなくなる恐れがあるので、リサイクリングが溢れようと食器が台所に翌朝まで散らかろうと放置した。そしてさりげなく、
「リサイクリングたまってるよ〜」
と注意を促す。しかし、この声には、
「ちゃんとやれよ〜」
と脅迫メッセージが含まれているのを彼は受け取っていたはずだ。彼側のベットサイドに洗濯物の山が出来ても、洗濯籠に入ってなければ洗わない。掃除機もその山を避けてかける。
「あれ、ベットのそっち側に正体不明の山ができてる」
“Oh! Where is it?"
わざとらしく驚きながら、
“That’s not so big."
と、とぼけるのも憎らしい。キレイ好きな人にはこういった過程は苦痛だろう。私は怒りながら片付け役にまわってガミガミパワーを使うより、散らかし具合を放っておくほうが精神衛生上ラクなのでラッキーである。本人にやってもらうことが肝心で、私がいつもやっていたら、最終的にすべて私の担当になってしまうに違いない。忍耐と継続がものを言うのだ。でも、きちんと役目を果たしてくれた際には、大げさに褒めたたえ感謝することを忘れてはいけない。内心ではふと、猫のしつけに似てるよなあ、と思うこともあるのだが、敢えて口に出して言わない。

そんなある日、ダンナは言った。なんだか、私が彼をコントールしているみたいだ、と。
「違うよ。"Control “でも"Manipulate"でもなく、ただ正しい道に導いているだけだよ。強いていえば、"lead" だよ」
“That’s the same thing…."

実は私の方も自分でやったほうがラクだなあ、と思うこともあるのですよ。もうちょっと気を遣って自発的にやってくれると嬉しいんだけどね。でも、あたしもパーフェクトな人間じゃないし、あまり相手ばかりに求めるのもよくないから、正直言ってダンナはよくやってくれてるな、と感謝しているのである。


■ ■ ■

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