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今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。
第33回 :里帰り
久々に日本に帰ることにした。思えば前回帰国したのが2000年の正月だったので、かれこれ1年8ヶ月ぶりの帰省であった。
ダンナは、
「1ヶ月くらい帰ってきたら〜?」
とお気楽に言ったが、私にしてみればトンデモナイことだ。珍重されて、いたわってもらえるのはせいぜい1週間が限度。それ以降は単なる「居候」に降格するのは目に見えている。いくら家族といえどもダラダラと居座るのは気が引ける。そう、「働かざるもの食うべからず」。30歳手前の娘(無職・学生)がのほほんと休暇を楽しむのはちょいと罪悪感があるのだよ。
とはいえ、結局2週間ほどの日本滞在になった。
「少し太りましたか?」
「なにその髪型?髪、黒くなったんじゃない?」
と一通りお決まりの歓待を受ける。あたしの髪が黒くなったんじゃないわよ。あんたたちがテラテラしたオレンジ色に慣れたせいよ、と内心思ったのは言うまでもないが、まあ、流行だから仕方がない。
さて、この滞在にあたり、常に自分に言い聞かせていたことがある。
「あまり日本を美化しすぎないように」
短期滞在というのはあまりに楽しく、美しい思い出になりやすいものだ。この地に住んで働けばいくらでも苦しいことはあるだろうに、旅行者の身になるとどうしてもいい思い出しか残らない。
私が日本のことを褒めたとき、日本から留学に来ていた人に、
「ええっ、日本に住みたいんですか?信じられない。私はずっとアメリカに住みたい」
と言われたことがある。「隣の芝は青く見える」のだ。アメリカに憧れて勉強に来たのだから彼女がそう思うのは当たり前。そして私はアメリカに住んでいるので日本がことさらよく見えるのだろう。
でもね、確かに食べ物はうまいからしょうがない。
近くのスーパーに行けば多様多種の作りたて惣菜が、コンビニに行けば小粋なデザートたちが私を魅了する。ううっ、日本に住んでたらきっとスーパーの惣菜を夕飯に多用しちゃうだろうなあ。かぼちゃコロッケ、カニクリームコロッケ、さば南蛮、切干大根・・・。ああ、あたしが作るより美味そう・・・。スーパーやコンビニレベルでこんなに胸がときめくなんて、ダメね。あたしの味覚は某大味大国の食生活によりちゃくちゃくと侵されつつあるようだ。シアトルに住んでいても日本の味は手に入るが、コンビニレベルのお手軽さ、とは行かない。しかも節約モードに入った場合、何とか近くのスーパーで買えるものをとりあえずしょう油で味付けて、自分をだましだまし生きていくのが小市民というものではないか。
そして何と言っても、自分のヘタクソな英語に辟易することなく何でも自分でできちゃう心地よさはたまらない〜。
"Hah?"
なんて鼻から高々出した声で無造作に聞き返す人もいなければ、
"I don't know."
なんて素っ気無く付き返す人にも下手に気を使う必要もない。
「アメリカ人は何でもハッキリと直接的に物を言う」
なんていう人がいるけど、「ありゃーうそだ、うそ」と私は思っている。確かに"NO"を言うのは日本語よりは簡単だけど、そのあと延々とその理由を述べるのは常だし、なんだかんだと遠まわしな言い方をして気を遣うところは日本もアメリカも一緒だ。これだけ大きい国だから無神経な人もたくさんいるが、日本にだって無神経な輩はあちらこちらに存在する。だから、どうせ気を遣った言い方をするのなら、日本語のほうがペラペラ、あたしは役者か?と思えるほどノリにノッて演技がかった言い訳をすることも可能である。
今回は1人での里帰りであった。空港に出迎えに来てくれたダンナは何故か宇和島屋で買った花と食料品を持って待っていた。「日本から帰ってきたばかりなのにナゼに?」と?マークでいっぱいの私は悟った。おそらく彼は、私が日本を大好なあまりアメリカに帰ってきてもまた日本に戻りたい、と言うのを恐れていたのだろう。
すまぬ、夫よ。気を遣わせてしまったようだ。
アメリカ人と結婚してしまったので、やっぱり私ももうちょっとがんばってここで生きていかないといかんなあ、としみじみと思う今日この頃。
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