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  今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。    
       


第30回 : I'm honest, but I'm not popular.


いや〜長かった。実に長い5ヶ月半だった。

以前のエッセイ「Pink slip」でその時の出来事を書いたが、ダンナがレイオフになったのは去年10月のこと。その後、同じ会社内の違うポジションに空きがあり、2週間後に職を得たが、12月にまたまたレイオフの嵐が吹き荒れ、見事にその標的になってしまった。頃は1年に1度の大イベント、クリスマス前。そりゃー空しいに決まっている。私がもし正月前に解雇されたらきっとショックに違いない。

まあ、遅かれ早かれ、仕事は見つかるだろう、と思っていた。経験がないわけでもスキルがないわけでもない。8歳でプログラミングをはじめ、数々のプログラミング言語を独学で学んだ真性"Geek"の彼である。ここ近年のにわか成金の代名詞となったコンピューター・プログラマーであるが、彼にとっては、

「俺の出番が来たぜ」

という感じだったに違いない。ただ、生まれるのがほんの数年遅かったため、その絶好の時期を逃してしまったようだ。

最初は彼自身も楽観視していた職探しであったが、これが予想外に難航した。何せ、同じような、いや、それ以上の経験・スキルを持った人たちが山のようにレイオフにあったのだ。競争倍率もそりゃー高いに決まっている。

「けっ、俺を採用しないなんてあの会社も見る目がないぜ」

という態度が次第に、

「Nobody likes me…」

と自信喪失気味になってきた。一番いやなのが、2度も3度も散々インタビューをしておいて、そのあと何の音沙汰もない会社である。ダメならダメって言ってくれればいいのにねえ。せめてEメールのひとつくらいくれてもいいのに。結果待ちの身としては、電話のベルがなればすっとんで行ってセールスコールの相手をし、一日中Eメールが気になってパソコンの前から離れられない。時間は腐るほどあるけど、職探しのことを考えると好きなカヤックさえも楽しめないようだった。自分が世間から必要とされていない人間と感じながらも幸せな人間なんてどこにいるものか。数々の会社に断られ続けながら、なお自分を信じて自信を保つには、相当逞しい精神力が必要である。

もし私が採用担当者だったら、どんなにスキルや経験があっても偏屈そうな人と一緒に働くのはいやだなあ、と思う。私はひそかに考えていた。うちのダンナの問題はそこかもしれない・・・。自分のダンナのことを偏屈だとは言わないが、時々失礼な物言いするもんなあ。特定のコンピューター会社を忌み嫌っているようだが、不幸なことに、多くの会社がそのブランドを使っているので、それを使って仕事をしなければいけないことが多々ある。面接の時にそのコンピューターの話をしたら、いやーな顔してるんだろうなあ。目に浮かぶわ。

「面接の時は印象が大切だから、ある意味、ちょっと自分をフレンドリーな人間に見えるように演出した方がいいんじゃない?時々率直に言いすぎる時があるから気をつけてね。あたしにはあんたに悪気がない、ってわかるけど、他人にはわからないんだし」

すると彼が一言。

"I'm honest, but I'm not popular."

よく言うよ。君の場合は、時々失礼なだけさ!嘘も方便っていうし、正直に言うのがいつも最善の方法だとは思わないけど。しかし一方で、人間、正直が一番、ともいうし、難しいですな。無理して演じて面接官を騙したところで、もしかしたら会社の社風に合わずに居心地の悪い思いをする可能性もある。じゃ、どうしたらいいんだろうねえ、面接の場合は・・・。

4月に入ると、面接の回数が目に見えてぐっと増えた。そして、苦しみの就職活動の幕切れはとうとう訪れた。ある大きな会社と彼のかつての上司が始めた小さな会社の2社から、ほぼ同時に採用の旨の連絡が入った。実は、彼がどちらを選ぶかだいたい予想がついていた。結局、彼の慕う元上司の会社に決めた。大きな会社の歯車の一部として働くより、もっと自分のアイディアが生かされるチャンスがあるところで働きたいようだった。ま、大きい会社で働いてもレイオフになる可能性もあることだし、それなら好きなことやったほうがいいじゃないですか。

実はもうひとつ、彼が小さい会社を選んだことに賛成した理由がある。少なくとも元上司は彼の性格を知っていて、その上でお声がかかったわけである。それなら彼の"honest"によって会社での人間関係が悪化することがないし、第一、オフィスには彼と上司の2人のみである。"honest"だけど"popular"でないダンナを持つ妻の立場として、彼のことを理解し、そして必要としてくれるところが見つかって本当にうれしい今日この頃である。


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最終回 ふと気がつけば5年目
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第35回 ガイジンの私と移民局(その2)
第34回 ガイジンの私と移民局
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