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  今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。    
       


第3回 : 言葉摩擦


みなさんは「言葉摩擦」を体験したことはありますか?例えば、悪気があって言ったわけではなかったのに、英語の表現が適切でなくて相手がいぶかしげな顔をしていたり、逆に日本語を学習している、という他の国の人と話した時、初めて会ったにもかかわらず妙になれなれしかったり。もし、こういったことが起こったとしてもそれほど大きな問題ではないと思います。そこから「ああ、こういう言い方はこういう場面では使わない方がいいんだな」と学習していけばいいのだし、よっぽど大きな失敗を しない限り、相手も悪気はなかったのね、ただ言葉を間違えたんだね、とわかってくれるでしょう。 問題なのは、「故意に」適切でない表現を使うこと。そんな人いるの?と思うでしょ?いるんですよ、それが。そう、うちのダンナです.....。

彼は1年間日本に留学していましたが、もともと専攻は日本語ではありません。しかし、彼は大学1年生の時に日本のアニメに出会い、それ以来、自称「おたく」と名乗るほどその世界にのめりこんでしまったのです。

そして、彼の日本語学習の教材はもちろん「アニメ」。つまり、アニメの主人公たちが彼の日本語の先生となり、
「貴様、今何と言った?」
「◯◯君ったら、ホントにいじわるなんだからあ」
「俺は人間だー!俺を番号で呼ぶんじゃねー!!」
と、時には異次元空間で、時には西暦25世紀で、そして時には進化しすぎた文明によって壊滅状態になっている人類が、荒れ果てた砂漠にドーム都市を建設して生きている、というような、非日常的な中で会話をしているのです。

そういわけで、彼は時々、私がぎょっとするような日本語を使います。例えば、びっくりした時、
「きゃーやめてー」
それから、
「我々は......」
「僕はね、これが好きなの」
などなど。最初は私も、
「それはねえ、女の子が使う言葉なんだよ」
と注意していたけれど、本人もそれをわかっていて、楽しんで日本語を使っている、ということがわかったので、まあいいか、と気にしなくなりました。楽しんで言葉を使えるなんていいなあ、といううらやましい気 持もありました。

ところが、ところが。困るのはケンカの時。初めは、私は日本語でまく したて、ダンナも英語で応戦する、という形だったのだけれど、(だって、主張するには自分の第一言語が一番有利でしょ?)、最近彼は日本語でケンカすることに挑戦し始めたのです!
「お前、やめろ!」
「はやくしろ!何やってんだよ」
「ばかじゃないの、お前!」
カチーン!!お、お前って、ど、ど、どういうこと?お前にお前って言われたくないわよ!何か人に頼みごとするのに、その横柄な態度は何なのよ!しかし、私も、
「きっとこれは、彼の日本語ボキャブラリーの一番悪い言葉を総動員して いるに違いない」
と冷静に察し、いくらケンカでも、怒っていても、
「そういう言葉を使ったら相手はどんどん気を悪くしておさまるものもおさまらないし、命令形では、相手はあなたの頼み事もきいてくれないわよ。アニメの世界ではそれでいいかもしれないけど、あなたと話してるのは本物の人間で、ここは現実の世界なのだから。日本語が好きで使いたいの はわかるけど、そんなに不愉快な言葉をわざわざ使うのなら、英語で主張してください.....。私だって英語で失礼なことをいうかもしれないけど、1回注意してくれればわざと使ったりしないから」

が、こんなにお願いしているのにもかかわらず、やつはまたもや暴言を吐 いたのです!もちろん私は怒りまくりました。当り前だ。何も知らずに発言するならまだしも、前科アリ、執行猶予つきの身だというのに。言葉の問題じゃなくお前の性格の問題じゃー。わざわざ人の嫌がることをするんじゃねー!

この2ヵ月あまりの間に私はケンカするたびにキレまくり。その半狂乱ぶりにダンナもおそれをなしたらしい。そして彼はある提案をしてきました。
「どの言葉を使ったらダメなのかリストを作って、もしそれを使ったら罰を受ける契約をしましょう」
むむむ、夫婦間で契約とはアメリカ的だなあ。おもしろい。私はその提案を受け入れました。そして私は禁止語に 「お前」「やれ!」「何やってんだよ」「ばかじゃないの」 を選びました。今のところ、時々彼が使ってしまうことはありますが、本人も「ヤバイ」 という顔をしているので見逃すことにしています。

でもねえ、例え英語でも、ケンカの時にそんなに戦闘的につっかかってきたら同じ結果になると私は思うのだけれど......だって、結局は人間同士なんだから。どうでしょう?


■ ■ ■

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