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  今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。    
       


第28回 : イベント


イベント毎に向けての各小売店のディスプレイは、
「ほ〜ら、金使え〜、金使え〜」
と半ば脅迫されているような気になる。もちろん商売だから売るほうも必死なのはわかるのだが。QFCは、バレイタインが終わるとすぐイースターに向けて赤とピンクのラブラブモードからハッピーなバニーちゃんモードへと移行していった。そして、今やスマイルバニーちゃんグッズはディスカウント商品となり、でっかいカートに山盛りになって笑顔を振りまいている。ああ、栄枯盛衰、おごれる者も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし・・・。こんな移り変わりを年間通して眺めているうち、ホリデー用のかわいらしい観葉植物の鉢を見つけても、
「もう少し待てば値下げになるかもしれない」
と思わず伸ばした手をひっこめてしまう、あさましい私になってしまった。いや、賢い女と言ってほしい。ただし、クリスマス商戦後の大セールだけは別である。なぜならクリスマスショッピングに疲れ果て、もう安い買い物をするための作戦遂行に費やす余力が残ってないからである。その辺を見る限り、ふっ、あたしもまだまだ甘いわね。

バレンタインデーの午後8時頃、花束とカードをQFCで買う男性を数人見かけた。「ああ、パートナーにプレゼントするのね、美しいわ」というよりも、私には違って見えた。「ここで今日のプレゼントを忘れたら、恐ろしいトラブルになる!」と、仕事帰りで疲れたその横顔は語っているように見えたのである。めんどくさいけど、取りあえず押さえるべきポイントは押さえておこう、という感じである。「みんな大変ねえ、でもがんばるのよ」と私はひそかにエールを送った。

花束と言えばプレゼントの定番である。色気のない私の意見としては、もらったらその気持ちはうれしいけど、花瓶に飾られた花は基本的に死体で、残りの人生、いや、花生を費やしているに過ぎない。花生を謳歌した花を捨てる時に、何となく申し訳ない気分になる。それをいうとダンナは、花は観賞されるために育てられるのだからそれでいいんだ、という。まあ、それもそうだな、とも思う。

実は先日、私事ながら誕生日を迎えた。私にとってほとんどのイベントはあまり重要でない。ただ、誕生日やお正月だけは特別である。なぜかというと、何かうまいものを食うためのいい口実だからである。特にアメリカに来てからは、普段は食えない日本の高価なナマモノを食う絶好の機会となった。ダンナは、パーティーやってもいいよ、と気を使ったような口ぶりで言ってきたが、「あんた、何言ってんのよ!」と即却下。だって、誰が用意すんのよう〜。ホームパーティーだったら、みんなは気にしないで何か飲みたかったら勝てに冷蔵庫から出して飲んで、だべってリラックスできるかもしれない。でもあたしは、食べ物は足りてるか、などくだらないところが気になって落ち着かないのだ。大して気が利く方じゃないのに、そわそわしてしょうがない。というわけで、詳細に食い物屋情報を調べ、自分のために計画を練った。もはやダンナは、
「あなたのお好きなようにどうぞ」
とあきらめモードであった。

誕生日当日、待ち合わせた場所にダンナは車で迎えに来た。「おー、来た来た」と助手席のドアを開けた瞬間飛び込んできたのはハイキング用の水筒に突き刺さった黄色いチューリップの花束、バースデーカード、そして板チョコ数枚。しかもあたしの好きなダークチョコレート・・・。普通なら、
"Oh, you are so sweet. Thank you, honey."
なーんて言うところなんだろう。みんな口をそろえて、「素敵なダンナ様じゃないのー」などと言うかもしれない。しかし、私の脳裏に浮かんだのは、あのバレンタインデーの夜にプレゼントを買う疲れた男性陣の背中であった。 いや〜、あたし恐妻になってんのかなあ。知らず知らずに無言で脅してたのかしら。気をつけないとな〜(笑)。


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最終回 ふと気がつけば5年目
第53回 家を買うことにした "買った後の修理費"
第52回 家を買うことにした "もうこれでいいや"
第51回 家を買うことにした "3度目のオファー・2度目のインスペクション"
第50回 家を買うことにした "3回目のオファーを出す前に"
第49回 家を買うことにした "迷い"
第48回 家を買うことにした "強気な売り手"
第47回 家を買うことにした "2度目のオファー・初めてのインスペクション"
第46回 家を買うことにした "ふりだしに戻る"
第45回 家を買うことにした "初めてのオファー"
第44回 家を買うことにした "住みたい場所、見つけた"
第43回 家を買うことにした "物件を探し始める"
第42回 家を買うことにした "序章"
第41回 「2人単位」
第40回 「人の話を聞いてるの?」 (後編)
第39回 「人の話を聞いてるの?」 (前編)
第38回 「効率的」と「がさつ」の境界線
第37回 要はしつけ次第
第36回 新年の抱負は達成されるか?
第35回 ガイジンの私と移民局(その2)
第34回 ガイジンの私と移民局
第33回 里帰り
第32回 服を買いに行こう
第31回 ケーキ作りへのあくなき挑戦
第30回 I'm honest, but I'm not popular.
第29回 ダブルカヤック
第28回 イベント
第27回 オリンピック
第26回 これは・・・使えるな
第25回 今年の正月
第24回 お金に対する感覚
第23回 Pink slip
第22回 嫌われる国際結婚女
第21回 言い訳できないアメリカ
第20回 夏の生活
第19回 親知らずを4本抜いた
第18回 ライバル登場
第17回 アメリカのOtakuたち
第16回 ハイキング
第15回 シアトル化
第14回 私の家族との初対面
第13回 今年の正月は日本に行ってやるぞ
第12回 2人でカウンセリングに行きました
第11回 日本ぽい料理
第10回 人の嫌がることはしないようにね
第 9回 カタカナと正しい発音
第 8回 それ恥ずかしくない?
第 7回 良いサービス?悪いサービス?
第 6回 コミュニケーションのデジタル化
第 5回 Rob the cradle
第 4回 We are in the same boat
第 3回 言葉摩擦
第 2回 気遣いスイッチ
第 1回 国際結婚、はじまりはじまり・・・
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