|
 |

第28回 :
イベント
イベント毎に向けての各小売店のディスプレイは、
「ほ〜ら、金使え〜、金使え〜」
と半ば脅迫されているような気になる。もちろん商売だから売るほうも必死なのはわかるのだが。QFCは、バレイタインが終わるとすぐイースターに向けて赤とピンクのラブラブモードからハッピーなバニーちゃんモードへと移行していった。そして、今やスマイルバニーちゃんグッズはディスカウント商品となり、でっかいカートに山盛りになって笑顔を振りまいている。ああ、栄枯盛衰、おごれる者も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし・・・。こんな移り変わりを年間通して眺めているうち、ホリデー用のかわいらしい観葉植物の鉢を見つけても、
「もう少し待てば値下げになるかもしれない」
と思わず伸ばした手をひっこめてしまう、あさましい私になってしまった。いや、賢い女と言ってほしい。ただし、クリスマス商戦後の大セールだけは別である。なぜならクリスマスショッピングに疲れ果て、もう安い買い物をするための作戦遂行に費やす余力が残ってないからである。その辺を見る限り、ふっ、あたしもまだまだ甘いわね。
バレンタインデーの午後8時頃、花束とカードをQFCで買う男性を数人見かけた。「ああ、パートナーにプレゼントするのね、美しいわ」というよりも、私には違って見えた。「ここで今日のプレゼントを忘れたら、恐ろしいトラブルになる!」と、仕事帰りで疲れたその横顔は語っているように見えたのである。めんどくさいけど、取りあえず押さえるべきポイントは押さえておこう、という感じである。「みんな大変ねえ、でもがんばるのよ」と私はひそかにエールを送った。
花束と言えばプレゼントの定番である。色気のない私の意見としては、もらったらその気持ちはうれしいけど、花瓶に飾られた花は基本的に死体で、残りの人生、いや、花生を費やしているに過ぎない。花生を謳歌した花を捨てる時に、何となく申し訳ない気分になる。それをいうとダンナは、花は観賞されるために育てられるのだからそれでいいんだ、という。まあ、それもそうだな、とも思う。
実は先日、私事ながら誕生日を迎えた。私にとってほとんどのイベントはあまり重要でない。ただ、誕生日やお正月だけは特別である。なぜかというと、何かうまいものを食うためのいい口実だからである。特にアメリカに来てからは、普段は食えない日本の高価なナマモノを食う絶好の機会となった。ダンナは、パーティーやってもいいよ、と気を使ったような口ぶりで言ってきたが、「あんた、何言ってんのよ!」と即却下。だって、誰が用意すんのよう〜。ホームパーティーだったら、みんなは気にしないで何か飲みたかったら勝てに冷蔵庫から出して飲んで、だべってリラックスできるかもしれない。でもあたしは、食べ物は足りてるか、などくだらないところが気になって落ち着かないのだ。大して気が利く方じゃないのに、そわそわしてしょうがない。というわけで、詳細に食い物屋情報を調べ、自分のために計画を練った。もはやダンナは、
「あなたのお好きなようにどうぞ」
とあきらめモードであった。
誕生日当日、待ち合わせた場所にダンナは車で迎えに来た。「おー、来た来た」と助手席のドアを開けた瞬間飛び込んできたのはハイキング用の水筒に突き刺さった黄色いチューリップの花束、バースデーカード、そして板チョコ数枚。しかもあたしの好きなダークチョコレート・・・。普通なら、
"Oh, you are so sweet. Thank you, honey."
なーんて言うところなんだろう。みんな口をそろえて、「素敵なダンナ様じゃないのー」などと言うかもしれない。しかし、私の脳裏に浮かんだのは、あのバレンタインデーの夜にプレゼントを買う疲れた男性陣の背中であった。
いや〜、あたし恐妻になってんのかなあ。知らず知らずに無言で脅してたのかしら。気をつけないとな〜(笑)。
注)当ページに記載されている内容は個人の一意見です。この情報に基づいて行動した結果なんらかの損害が発生した場合においても、執筆者およびジャングルシティは一切責任を負いません。記載された情報を活用される場合は、あらかじめ専門家に照会するなど必要な確認を行った上、ご自分の責任で判断していただきますようお願い申し上げます。
|
 |