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  今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。    
       


第27回 : オリンピック


私たち夫婦はあまりテレビを観ない生活を送っている。極端な話、よく観るチャンネルと言えばCartoon Network かCNN、ラジオはNPR(National Public Radio)。2人ともニュースはインターネットで読む。大半は映画館へ足を運ぶか、レンタルDVD、日本のアニメを観る事が多い。最近になってようやく気づいた。すごく偏ってるわね、私たち・・・。ちょっとオタクに磨きをかけすぎたかしら。ああそうだ。オリンピックが始まるから観てみようかしら。でもいつから始まるのかなあ。まあ、そのうちみんなが騒ぎ出すからわかるよね。と、漠然と思っていたのは今年2月の初め頃のことであった。

先月2月のある日、友達が遊びに来た。ダンナも含め、3人での夕食の準備を始めたところ、友達がふと思いついたように言った。
「今日オリンピックの開会式があるよ」
えっ?そうなの?今回のオリンピックの開催地ってアメリカだよね?その割には学校でも周りの人たちが話題にしていた様子はなかったけど・・・まあ、気づかなかっただけかもしれない。あたしも普段テレビ観ないから、世間の盛り上がりに気づかなかっただけよねー、と自分に言い聞かせ、気を取り直してテレビをつけてソルトレークシティでの開会式の中継を観た。

日本にいる時も、私は特にスポーツに興味はなかった。と言っても、オリンピック真近になれば特集番組が増え、オリンピック選手を使ったスポンサーのコマーシャルがガンガン流れ、「オリンピックまであと○日!」というカウントダウンが世界規模の熱い戦いの予感を演出していた。オリンピックが始まれば視聴率獲得に躍起となる各テレビ局は有名タレントを起用し、競技の基礎知識がない彼らはただはしゃぎ、時には大げさに絶叫し、時にはオリンピック選手たちの感動のドラマを作り上げていた。ちょっと演出過剰、役立たずの黄色い歓声用タレントがうるさすぎ、メダルの数にこだわりすぎなんじゃない?と鼻につくところはあったにしろ、毎日のようにテレビで観戦していたし、オリンピック期間中はどこに行ってもその話題でもちきりだった。

そのイメージがあったので、開催国であるアメリカが騒がないはずないよなー、と思っていたのだが・・・あれ?テレビつけても中継やってないなあ。どのチャンネルだっけ?日本の選手が今日出るから観たいんだけど、とダンナに尋ねたところ衝撃の一言が返ってきた。
「夜しかやらないよ」
「夜しかやらない?でもゲームは昼にやるんじゃないの?」
「だから、録画したやつを編集してやるの。2〜3時間くらい」
な、なんということじゃ・・・オリンピック開催国だというのに録画なのかい・・・時差も関係ないから今回はラクだなあ、と思っていたら、こんな展開があろうとは。しかし、カナダのテレビ局が生中継をやっている、と聞いてさっそくそちらのチャンネルで日本人選手の活躍を見逃すことなく楽しめたから良かったのだが、私の大きな疑問は頭の中を駆け巡っていた。
「アメリカ人はこういうテレビ中継の仕方に不満がないのかなあ?」
夜にNBCをチェックしてみると、「昼間は時間がなく忙しい視聴者がオリンピックを楽しめるように編集してあげたダイジェスト版」が放映されていて、ご丁寧に画面の左上には"Live"と表示されていた。いくらなんでもそれはうそがすぎるんじゃないの?とうさん臭く思っていたが、オリンピック最後の最後までNBCは"Live"と表示し続けていた。

去年のテロの後なので、アメリカの愛国ムードが高まってるだろうし、スポーツ観戦も人気があるし、オリンピックはみんなが過激に興奮するに違いない、と思っていたのに、かなり意外な展開であった。そういえば、去年の夏のシドニーオリンピックも生中継がなかったために、インターネットで結果を知ったゲームなんてつまらん、とみんな見向きもしなかったんだよねえ。

まあ、そんな疑問はあったものの、私たちはどっぷりとオリンピックにハマッていた。2年半前にテレビを買って以来、こんなにテレビをつけっぱなしにしていたのは初めてであった。特に失業中のダンナは、毎日朝からテレビをつけ、オリンピック中継をチェック、日に日に口調が評論家風になっていった。
「あんたねー、そんな偉そうなこと言ってるけど、それやったことあるわけ?」
と、つっこみたくなる勢いで、特に彼は、
"Curling is pretty cool!"
と、私が学校から帰宅した時には食い入るようにカーリングの試合を観ていた。私にはその魅力は理解できなかったが、彼にとっては何か心に訴えるものがあったのだろう。時々、
「誰がこれを競技にしようと考えたのか?しかも、どういう経緯でオリンピック公式種目になったのか?」
と思わせるような競技種目に出会う。実は私にとってカーリングもその1つなのだが。今までスポーツ観戦などしたこともなかった彼がここまでハマるとは正直言って意外であった。

もうひとつ、日本でオリンピックを観ていた時は気づかなかったことがある。それは、けっこう日本人が決勝まで残ってるじゃないのー、ということ。日本の報道ではメダルの数の報道が過激で、メダルがとれないと「日本不振」だの「メダルに手が届かず!」などと選手が無能みたいにこきおろされて気の毒になる。でも今回、決勝しか放映されないことが多くても、思ったよりたくさんの日本選手を見ることができた。たくさんの参加国・参加選手の中から決勝に勝ち残るだけでもすごいことなんだよなあ、と実感した。そこでメダルがとれなかったことによって無駄な4年間と決めつけられるような報道をされるとすごく寂しい気持ちになる。

ところで、そんなにオリンピックに興味がないアメリカががんばってオリンピック誘致したのかなあ?開催国になるところは経済効果を狙ってるんじゃないの?どう思う?とアメリカ人の友達に尋ねてみた。彼曰く、
「あれ、知らないの?"Bribe"、結構話題になったでしょ?」
とあっさり言うではないか。いや、どうやって誘致したかの手段じゃなくて、理由を知りたかったんだってば。まあ、いいか。


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