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  今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。    
       


第21回 : 言い訳できないアメリカ


移民向けのESLは、バラエティがあっておもしろい。
子持ちや仕事持ちの人が多く、みんながみんな進学したいというわけではなく、とにかく生きるために必死、というせっぱつまった様相がうかがえる。また、家族ベースで移民して来た人や戦争から逃れて来た人などもいて、ウエイトレスなどの賃金の安いところで働いていたけど、こんなところでやってられるか、資格でもとってやる、と一発奮起し、移民後5年後ほどして学校に入る人もいる。そういう人たちは、しゃべることにはあまり問題がないが、学校に入るためのグラマーやライティングの勉強は必要のようだ。この手のESLは移民に無料で開放されているが、人気のあるcommunity collegeだと1年待ちになることもあるらしい。

クラスで一緒になったタイ人の女性は、かつてはタイで大学を卒業し、15年間も教鞭をとっていた人で、アメリカに移民してからはテンポラリーで6年間も電子部品の組み立てをしていたそうだ。彼女も言葉の壁に苦しみ、あるアメリカ人女性によくからかわれたらしい。ある時など、そのアメリカ人女性は彼女に近づき、洋服につけてあったネームプレートを突然、何の伺いもなく、むんず、とひっつかんでまじまじと見た後、
「ふーん」 という感じでネームプレートを投げ捨てるように返し、去って行ったという。
そんな日々を過ごし、
「タイにいたらこんな思いをしなくてすむのに」
と、家に帰っても何も話したくない、という状態になってしまった。タイでは学校に戻ることがあまり一般的でないために、学校に行こうと踏み切るのにかなり時間がかかったそうだ。

特にもともと本国で職業を持っていた人は、英語ができないがために自分をうまく表現できず、そして自分がバカだと思われてるんじゃないかしら、と思い込んでしまい、悶え苦しむ。これは出身国を問わず同じということをESLで発見し、私はどれだけ気持ちが楽になったか!

クラスで、
「ここが変だよ、アメリカ人」
のような愚痴のハケ口になることもある。それぞれ感じるところは同じなのねー、と目からウロコが落ちた。その時の先生は英語ネイティブスピーカーではなく、確かシンガポール出身で、大学入学のために渡米し、その後アメリカ人と結婚した人だった。彼女の英語にはかなり強いアクセントがあって、
「これがESLの先生、っていうのはアリなのかしら?」
と正直、疑問に思ったものだが、彼女自身もアメリカでの生活で「??」と思ったことが多いわけで、移民の生徒のツボを押さえた回答ができるのは、移民の彼女ならではの技であった。

そんな移民の日々について、どれだけ皆苦労してるかアンタにわかるかい?という意味を込めてダンナに話したら、
「どうしてその人たちは早く学校に行かなかったの?」
と、何でもない風にいうではないか!はあ、彼らの一大決心がわからんかなあ、君には。いや、わからんな。アメリカではキャリアのために学校にいくのはよくあるもんね。まあ、ESLは無料だし、Financial Aidもあるし、Community Collegeの授業料も高くないので、確かに職業が気に入らなければ勉強できるチャンスはあるのだ。それはいいことだ。だから勉強しようと思えばできるし、その状況から這い上がれるわけで、言い訳できないのよねえ。

好き好んでアメリカにきたんだろ、努力しろよ、という理屈はわかるんだけど、時々
「日本にいたらなあ・・・・」
という仮定法が抜けない。あたしだってねえ、日本にいれば電話番くらい余裕でできんのよ。その一方で、そりゃただの言い訳で、日本にいたらいたで、アメリカが良く見えるに違いない。ただ単に今の状況が逃げたいだけで、隣の芝は青く見えるのだ。

それなのに、ダンナのステップファーザーときたら、
「27歳なのに、まだ英語のテストに苦しんでるの?Oh, poor」
だの、
「日本語しゃべれるんだから、日本語教師になれば?」
だの、さも簡単そうに言ってくれるではないか。日本語教師を甘くみんなよ。バーロー、という思いを込めて何度も説明したのだが、あまりわかってないようだ。ダンナもステップファーザーも学校嫌いだったが、本人たちはとりあえず大学を卒業している。
「なんで学校に行きたいの?学校好きなんでしょ?一生学生なんでしょ」
だの言いおって、まったくもって腹立たしい。ばかやろー、日本にいたら学生してないわい。アメリカ人がキャリアのために大学院に行く話はよく聞くが、この家族に限ってはそんなことは通用しないのだ。

自身の状況を開拓していくことに対して言い訳はできない国だわ、と思う反面、アメリカの生活では言い訳が多いと感じるのは気のせいかしら?デリバリーが来ないなー、と待っていたのに電話したら、忙しかった、と言い訳。どう考えたってその人に非があるのに、まず、言い訳して、謝りナシ。まあ、ある場面で安易に謝ったら訴訟沙汰になった時に不利になる、っつーのはわかるんだけど、店員やカスタマーサービスも結構言い訳がましいような気がする。本人たちは単に、なぜそうなったか、という状況を説明してるだけなんだろうけど、
「言い訳はいいから、どうにかしてくれ」
と思ってしまう。 ああ、奥深い社会構造だわ、アメリカって。


■ ■ ■

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