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  今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。    
       


第20回 : 夏の生活


夏になると、今のうちに外に出ておかないと、という気持ちになる。

この時期を逃したら、また曇りなんだか雨が降るんだかはっきりしろー、いいたくなるような天気が続くからである。人間、寝貯めと食い貯めはできないというが、この天気を1ヶ月くらい貯めておけないものか。はじめてカタログ販売で太陽光のかわりに室内で光を浴びるためのライト、というのを見た時は、おお、アメリカの通販には何でもあるのね、わはは、と笑い飛ばしていたのだが、近くにいたダンナの両親が、
「それ欲しいなら買ったら?」
と、ごく普通に買い物を勧めるように言うので、こんなの欲しいわけないでしょーが、と内心思ったものだ。

しかしこのシアトルでの夏以外を経験した人間で、誰があのライトを欲しがる人を笑い飛ばすことができよう?それであのもやもやとした眠気から開放され、ほんの束の間でもささやかな光に包まれ、まぶたの裏には、あの夏のまぶしいばかりの太陽がよみがえるのだ。日焼けサロンのローストビーフ、いや、ロースト人間になっている人たちは、あの目を守るためのサングラスのなかで同じように南国のぎらぎら太陽を夢見ているのであろうか。

というわけで、普段はコンピューターの前にいることが多いおたくな夫婦であるが、夏ともなるととにかく外にでなければ気がすまない。当然のごとく、6月のある日帰宅すると、狭いアパートのデッキにはHome Depotで購入したちいさいバーベキューグリルが装備されていた。それからは普通のオーブンを使えばいいものを、何でもかんでもバーベキューし放題。

週末はハイキング。私の体よりもでかいくらいのバックパックを背負い、短い足でふうふう言いながら登っていく。REIのカタログの人たちみたいなアメリカ人のハイカーたちは、長い足ですたすたと私を追い越していく。きっと私の姿は「姥捨て山」に行くごとく悲哀を漂わせているに違いない。

カヤックをするとなれば、ダブルカヤックの時は2人とも黙々とパドルするので、まるでボート部の部員のようになる。よく考えればそんなに急がなくてもいいのだけれど、なぜかそうなる。無意識のうちに夏は今しかない、遊んでおかなければ、という焦りが働いているのかもしれない。

ハイキングにもカヤックにも行く予定がなければ、近くの公園でメシを食う。「ピクニック」というほどのものではない。3合炊きの炊飯器の釜、家で使っている陶器の食器そのまま、中国製のござ、麦茶、バーベキューで焼いた肉をホイルとタオルで包み、それらを持って、ワッセワッセ、と公園に向かうのである。わざわざ外で食べなくてもいいのだが、何かが私たちを駆り立てるのだ。光合成化してきているのか?しかし有用なものは何も生み出さないな、私たち・・・。

1つだけ私ができないことがある。それはサイクリング用の黒いピタピタのタイツをはくことだ。あれはどうも恥ずかしくてできない。ヘルメットをかぶり、シャカシャカと自転車部隊は颯爽と風を切って走っているのを見かける。皆、装備がなかなか本格的である。黒いタイツは汗の吸収もよいし、風の抵抗も少なくて機能的に優れているのはわかるのだけれど、私はプロじゃないしねえ。第一、あのピチピチ、ムチムチさが体型をクッキリと浮かび上がらせるではないか。自分の肉がはみ出た姿は見たくないのである。

あと1ヶ月半、心残りないように過ごしたいものだ。


■ ■ ■

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