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今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。
第18回 : ライバル登場
私は臭い食べ物が好きだ。
以前彼の両親と一緒に住んでいたときには、味噌の匂いは強烈なので朝の味噌汁もあまり食べないようにしていた。彼のおかーさんが起きてきたときにすごく臭がっていやな顔をするからである。ま、たしかに独特な匂いだよなあ。
しかし、ダンナと2人で暮らすようになってからはその我慢の反動からか、有無を言わせぬ勢いで好きなものを食っている。
ダンナがどんなに嫌な顔をしようと、朝食に納豆を食べる。
彼の、
「うえ〜」
という悲鳴をBGMに、時々生卵もいれてぐちゃぐちゃにかきまぜてあつあつのご飯にかけて食べるときの幸せはたまらない。私は魚好きなので、日本で1人暮らしをしていたときは毎晩のようにさばの文化干しだのあじの開きだのを焼いて食っていた。スーパーで「開き魚1枚100円均一」の時には1週間分買い込んで冷凍庫に保存していた。何より簡単調理である。焼くだけ!
シアトルでは日本の物はほとんど何でも手に入る。ただ、めんどくさがりの私としてはわざわざそこまでいくの億劫だし、週末は人ごみの中に行きたくない。そして何より、日本での生活をそのまま維持するのは金がかかる。というわけで、できれば近くのQFCかPCCで間に合わせ、どーしても欲しいもの、例えば納豆や日本の調味料、その他の臭い食い物は1ヶ月に1回くらい日本食スーパーに買い物に行くことになる。QFCでもサーモンなど数種類の魚は買えるのだが、決定的に足りないものがある。そう、臭さが足りないぞ!生鮭はやはり焼く前にたれに漬け込んでおかないと、食っている最中にその淡白過ぎる味に飽きてくるのだ。いくら濃厚な西洋風ソースがかかっていても、途中で食べられなくなる時もある。
というわけで、私とダンナが好きな食い物で争うことはあまりない。
強いて言えば、アイスクリームくらいである。
私の食べ物専用棚の聖域が侵されることはまず、ない。
ところが、去年の夏、日本から新たなライバルが登場した。
彼の名前は「レイ」。
彼とはかれこれ5年くらいの付き合いになるので、ダンナよりも長い月日を共にしている。1日22時間は睡眠をとるくせに、他人が寝ているのは許せない性質で、私を毎朝4時か5時に起こしてくれる。
そう、彼は私の飼い猫なのだ。
その彼と私の食の好みが非常に似ている。
アメリカに彼を連れてきてから気づいたのだが、ペットショップにでっかい袋に入った猫用の魚のおやつがないではないか。そうか、アメリカの猫はやはり肉で育つのか。小さい袋のやつは手に入るものの、こんなんじゃ家のデカイ猫はすぐ平らげてしまう。ダンナ曰く、
「猫はふつう肉を食べる。魚も食べるけど。Your cat is strange.」。
でも日本の猫は魚で育つんだよう。肉も食べるけどね。サザエさんだって、
「お魚くわえたどら猫 追っかけて〜」
って歌ってるんだから。
レイはQFCで買った魚にも興味を示さない。
鼻先まで魚を近づけても、フンフン、と一応チェックは入れるものの、
「あ、そう。興味ない」
という素振りでツレナイお方である。しかし、私が日本のスーパーで買った魚を食べている時にはすかさず擦り寄ってきて、皿に顔を近づけて今にも私の大事な魚にかぶりつきそうな勢いなので、油断できない。
そして私専用の日本食保存場所もついに突き止め、執念で開ける術を習得するまでに至り、私は「そうはさせるか!」と、でっかいテープを張って開き戸が開かないように応戦した。ははは、人間は君よりも賢いのさ、と勝ち誇っていたはずだった。
ある日、私とダンナは外出先から戻ると、おそろしい光景が目に飛び込んできた。
台所の床一面にちらばるかつおぶし・・・・・。
私の日本食保存場所に張ってあったテープは弱くなっていたらしく、彼は口を使って剥がし、お目当てのかつおぶしをまんまと手にしたのであった。
さらに腹立たしいことは、うれしさのあまりかどうか知らないが、かつおぶしのパックを食いちぎり床一面に散らかし、その麗しき魚のフレーバーを堪能したあと、大して食さずに終わったことだ。
食べ物を粗末にするんじゃない!
どうせやるなら全部食え!
かつおぶしはその辺のコンビニに売ってるわけじゃないんだから、宇和島屋まで行かなきゃなんないのようっ!
私のこの虚しさを即座に察したダンナは、
「僕が片付けるよ・・・・」
と自発的に床を掃き始めた。私を相当哀れに思ったらしい。
私は速攻でこのゆゆしき事態をメールで姉に訴えた。後日、日本の姉から私宛にかうおぶしとふりかけ、そして猫用おやつ(ホタテ風味するめ)が数パック送られてきた。
「え?おねーさんから何か届いたの?・・・・何で猫にはプレゼントがあるのに・・・僕には?」
そう、ダンナには何も届かなかった。私がレイをアメリカに連れてくる前まで姉がレイの世話をしてくれて、とてもかわいがっていたのだ。しかしダンナにしてみりゃ、何で猫にプレゼントがあって俺にはないんだよ!ということらしい。そして今、
"You spoil your cat."
と、レイはダンナのライバルにもなりつつある。
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最終回
ふと気がつけば5年目
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第53回
家を買うことにした "買った後の修理費"
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第52回
家を買うことにした "もうこれでいいや"
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第51回
家を買うことにした "3度目のオファー・2度目のインスペクション"
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第50回
家を買うことにした "3回目のオファーを出す前に"
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第49回
家を買うことにした "迷い"
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第48回
家を買うことにした "強気な売り手"
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第47回
家を買うことにした "2度目のオファー・初めてのインスペクション"
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第46回
家を買うことにした "ふりだしに戻る"
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第45回
家を買うことにした "初めてのオファー"
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第44回
家を買うことにした "住みたい場所、見つけた"
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第43回
家を買うことにした "物件を探し始める"
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第42回
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第41回
「2人単位」
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第40回
「人の話を聞いてるの?」 (後編)
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第39回
「人の話を聞いてるの?」 (前編)
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第38回
「効率的」と「がさつ」の境界線
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第37回
要はしつけ次第
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第36回
新年の抱負は達成されるか?
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第35回
ガイジンの私と移民局(その2)
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第34回
ガイジンの私と移民局
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第33回
里帰り
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第32回
服を買いに行こう
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第31回
ケーキ作りへのあくなき挑戦
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