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今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。
第16回 : ハイキング
最近、冬眠状態の動物のように体重が増えて、生来のものぐさに磨きがかかり、しかもコンピューターの前にかじりついていた。これが暖かい季節だと、週末はハイキングやカヤックと、天気がいい限り、いや、悪くても安全な限り出かけてしまう。不思議なことに、そういう活動的な時ほど健康に気を使い、食べ物も体に悪そうなものは食べたいとも思わないのだ。
日本にいるときから山歩きは好きだったが、日本の場合、本格的登山を除き、シアトル近郊にある簡単なトレイルのような日本のコースには若者は皆無と言っていいと思う。私が添乗員のバイトをした軽登山のバスツアーはいつも中高年の高山植物ファンで一杯で、若い添乗員に至ってはこのコースの添乗自体をいやがっていたので、ハイキング好きの私はホイホイと引き受け、本当は皆と一緒に登らなくていいのに(登山専門のガイドさんがいるから)ここぞとばかりについて行った。
またダンナと日本の簡単なトレイルにハイキングに行ったときは、50〜60代くらいと思われるいくつかの登山グループに出会い、昼食時には「昼食物々大交換会」が始まり、みかんやらお菓子が行き交う光景に圧倒されつつ隅っこの方でダンナとおにぎりを食っていた。このハイキングに出かける前から、
「言っておくけど、日本のハイキングには若者はいないぞ。たぶん遠足の子供と中高年だけだよ」
と予備知識を吹き込んでおいたが、この言葉を聞いた彼は、
「ハイキングみたいな体力を使うスポーツを子供と中高年だけがするなんて変だ」
と鼻っから信じていなかった。しかし、実際にその昼食時の出来事に遭遇し、
「・・・・本当に若い人がいない・・・・」
と呆然としていた。
まあ、これは私が住んでいた東北地方での話なので、他の地域ではもっとスポーツとして浸透しているのかもしれない。ハイキングではないが、私の実家の弘前では秋になると皆いそいそと山菜採りに出かける。私と同い年の女友達の話によれば、山菜取りや山歩きをする同年代の友達はなかなか見つからない、とのことだった。
シアトルにきてよくハイキングをするようになった。
何しろ私は身長150cmのチビなので、まず皆と歩幅が違う。他のメンバーはべちゃくちゃと喋りながらあっという間に見えなくなってしまう。
「やっぱり肉とイモを食って育った人間は体力が違うのか・・・」
とはあはあ、ゼイゼイいいながらも、いちいち待ってもらうよりも自分のペースで行った方がラクなので、でっかい荷物を背負い、てくてくと、もう見えなくなった皆の後を付いて行く。
だいたいキャンプ地にはトイレがないので用を足すときはトイレットペーパーを持って茂みの中をしばし漂い、ここだ、と決めたところでそそくさとすばやく目的を達成する。もちろん使用済みのペーパーはお持ち帰りだ。私の場合、キャンプの時はその状況に緊張して大便を催すことはほとんどないが、その時のために小さい携帯用スコップも必需品である。キャンプ場でたまにみかけるが、これくらい掘れ、とか、小便は自然に良くないから、するならこの区域でしろ、 と指定しているところもある。
ある時は、成り行き上、どうしてもロッククライミング的に岩にへばりついて降りていかなくてはならなかった。いつもハイクに連れて行ってくれるダンナの友達は、私たちの目の前の崖を優雅に降りていく山ヤギの親子を指差し、
「ほら、山ヤギがどうやって降りていくか見せてくれたよ」
とのたまった。ばかやろう。山ヤギといっしょにすんなー!同じことできるわけねーだろー。
ある時彼は、
「金曜日の夜に出発して、ハイクし、朝日の写真を撮りたい」
と言い出した。夜にハイク?トレイルに明かりでもついてるのかしら?
そんなわけはない。
私たちは頭に電灯をつけ、暗闇の中をハイクした。まるで気分はなつかしの「川口探検隊」。
しかし仕事帰りの私は疲れ果て、とうとう午前2時前後にギブアップ。眠気と疲れで気持ち悪くなり、どうしても登れなくなった。
「お願いですだー、寝かせてくれー」
とダンナに頼み込み、たまたまダンナも疲れていたのでダンナの友達の反対を押し切ってその日は目的地までたどりつかずに就寝。もしダンナも元気でぴんぴんしていたら、私も無理やり目的地まで歩かされていたかもしれない。くわばら、くわばら。
最初からそんなところばっかりに行っていたので、
「そーかー、アメリカのキャンプ場は限りなく自然に近いから、トイレとか水飲み場とかは
ないのかー」
と単純に思っていたが、そんな訳はない。ただ単にそういうところを選んでいただけだったのだ。
ある日、なーんにも予定がない日があった。そういうわけで、
「シアトルの近くにも簡単なトレイルはあるでしょ?そこにいこうよ」
と、ダンナと2人で出かけた。
いつもと感じが違い、かなり装備の軽い人々ばかりだし、りっぱな公衆トイレもあるではないか。
「??」
しかも、いつもは出会うハイカーをいえば3組くらいなのに、その日は駐車場は満杯だし、やたらぞろぞろと人がいる。キャンプ場にはきれいな水飲み場もある。
なんだよー、アメリカにだってこういうところがあるんじゃないかー!!
つまり、うちのダンナは私がこの事実に気づくのを恐れ、真実を教えようとしなかったのだ!
もし知ってしまったら、
「えー、トイレあるところがいいー」
えー、そんなに高いところまで荷物持って登るのヤダー」
という可能性があるからだ。まんまとハメられていたのであった。
当たり前だー、あんな重いバックパック持って、体力底無し百戦練磨アメリカ人ハイカーに付いて行くのは大変に決まってるだろー。
今になってよくわかる。ダンナの友達のハイクはまさに「クレイジーハイク」であることを。
他にも2泊の予定だったハイクが、予想以上に雪が多くて道が凍り、3泊になってしまったり、例のダンナの友達の「朝日が撮りたい計画 Mt.Rainier」編もある。
これらの体験を通じ私は学んだ。
「Almost there!」「easy hike」「a little bit of snow」という言葉を信じてはいけないということを。
それらが真実だったことは一度もないのだ。ううっ。
それでもやっぱり暖かくなってくると、
「今年はどこに行くー?」
とウキウキしている私もクレイジーへの階段を着実に歩み始めているのかもしれない・・・・。
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ガイジンの私と移民局(その2)
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ガイジンの私と移民局
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