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  今のダンナが日本に留学していた時、度重なる「アメリカにおいでー」攻撃にまんまとひっかかって、1999年6月、シアトルの土を踏む。「英語ができない」「友達もいない」と、うだうだ悲しい気分が続いていたものの、どうにか自分が幸せになる道を作らねば、と奮闘中。苦しまぎれに「つまんなーい!日本に帰る−(T_T)」と半泣きになってもびくともしないダンナ相手に、悔しいのであれやこれやと作戦を練る毎日を送っている。    
       


第14回 : 私の家族との初対面


今年の正月は日本で迎えるのだー、と強い決意を胸に、帰省ラッシュを迎える年の暮れ、1年で一番あわただしいその時期にダンナを連れて実家に帰った。しかも私の実家は青森県弘前市。成田で飛行機を降りた後にも過酷な移動が待っていた。そう、夜行バス9時間の旅。帰省ラッシュに合わせて、その日は弘前行きだけでもなんと20台もの臨時バスがでていた。その他各地方都市行きへのバスを待つ人々でバスターミナルはごった返していた。つまりは田舎もんの集団なわけで、どんなに都会風になろうと、夜行バスで帰っていく若者たちの姿は21世紀を迎えようとしているその夜、何だかノスタルジーを感じさせるのであった。

さて、今回の帰省のもうひとつの目的は、ダンナをうちの家族と引き合わせることであった。というのも、実は彼らはまだ1度もお互いに顔を合わせたことはなかったのだ!あんた、黙って結婚したのか?という疑問にお答えすると、うーん、そうなるのかしら。というのは、結婚する前に日本にいる母親に電話で、
「あのさー、あたしガイジンと結婚するかも」
と2回ほど予告していた。1回目は、
「やめてけ〜気持ち悪いじゃ」
とまったく本気にしていない様子。2回目は、
「あんたもよぐ考えへー。そっちにずっと住むのがー?ま、あんたが決めることだはんで」
ってな感じだったので、まあ、怒ってる様子もないしいいか、と思いアメリカで結婚に及んだわけだ。私には全然結婚式に対する憧れというものがなく、むしろいろいろなことがメンドクサイと思っていたし、結婚指輪さえも欲しいという欲求が沸いてこなかったくらいだ。指輪は運転やタイピングに邪魔ではないか。しかし、おかーさん怒ってるかなあ、という恐怖感はいつもあった。なぜなら、彼女は、
「ガイジン?キモチワリー!」
と真っ先にいう人だからだ。

私の家族との初ご対面ということと長距離の移動で、ダンナのナーバス度は頂点に達していた。うちの家族は、といえば、ねーちゃんとそのダンナさん、おかーさんだが、へー、ガイジンか、やっぱり鼻が高いなー、くらいの驚き度であった。帰る前から、
「バターさえあれば食べ物はだいじょうぶ。あとはなんでも食うから」
と予告しておいたのだが、やっぱりガイジンだから朝食はパンだろう、とパンが用意されていた。日本に来たんだから日本式に、と彼が朝から米を食う姿に、
「朝からごはん食うのかー。パン食わねーのがー?」
と不思議そうな様子であった。ま、実は日本の食パンがあんまり好きじゃないらしいんだけどね。

日本語を話せるし、聞き取りができる、と言っても家族の中に入っていく、というのは難しい。私にも経験があることだが、会話の中でも、その家族の思い出を話している時に、
「そうそう。それでその時におかーさんがさー・・・」
という種類の会話になると、その当時その場にいなかった者は完全に部外者になった気分に なる。久しぶりに会った私たち家族はやはりそういう話になってしまうことが多かったので、ナーバスな彼としては辛かったのだろう。気が付くとリビングルームを抜け出し、2階で1人で本を読んでいることが何回かあった。1階から皆の笑い声が聞こえてくると、自分が話のネタになって笑われてるんじゃないかという妄想と、やっぱりガイジンの僕はみんなの仲間に入れないんじゃないか、という寂しさと悲しさが募ってくるようだった。

そのことを全部説明されなくても、その手の症状が進んでいるのが一目でわかった。あたしは彼の両親と暮らしていた時、いつも同じことを感じていたのだから。わかりますよ、よーくワカッテマスヨ、君の気持ちは。

この帰省にはひそかにひとつの目的が隠されていた。 「あなたもあたしの気持ちがわかりますように」作戦、である。同じような状況に置かれることで、あたしがダンナの家族との付き合い、つまり他人と住むということにおいて、どれくらい居心地が悪かったか、どういう気持ちになったか、ということを、身を持って体験して欲しかったのだ。

だからと言って、
「ほーら、私の気持ちがわかったでしょ。ふふーん。」
とイジワルに振舞ってはいけない。アメリカで同じようなことがあったときに助けてもらえないではないか。そこで、雪が降っていようが、正月だろうが、私はまめに彼を外に連れだす作戦を敢行した。家に篭っていると憂鬱な気分が増殖していくからだ。1泊1万円の旅館が高い、電車が不便だ、と不満タラタラ男に数回ほどキレたが、家で「だから日本人はキライだー」 と泣き叫ばれ、もう君の家族には会いたくない、と言われるよりマシだ。

うちの母親がいつも言うことが2つある。
「わー、金髪で青い目の子供だっきゃ生むなよー。気持ちわりー」
・・・ちなみにうちのダンナは目も髪も茶色である。これで私が碧眼金髪の子供を産んだら、私の素行を疑われることは必至だ。

「何かあった時のために、いつでも飛行機代くらいは持っておきなさいよ」
その「何か」が、日本の家族に何かあったときなのか、それとも夫婦間で何かあったときのことなのかは明確ではないが、おそらく後者を指しているのではないかと思われる。我が家の家計を仕切るのはダンナであるが、つまり母は、夫婦の危機に瀕した時に備えていつでも帰国できるように飛行機代程度のヘソクリを持っておけ、と言いたいようある。これを母の愛、と言ってよいものだろうか。ふーむ。

日本の正月を満喫し、食いたいものも食いまくり、友達にも会い、ダンナも家族との初対面を無事に終え、私としてはいい正月だったなあ、と今年は幸先のよいスタートを切った。何よりも母が、
「あんたが決めたことなんだからがんばりへー」
と諦めともつかぬ態度であったことにホッとした。そう、私は彼女の怒りを恐れていたのだ。 怒り、というよりも嫌われることを恐れていた。そんな結婚の仕方をしたあたしが悪いのよねー。そうです、そのとおりです。親の幸せとあたしの幸せの両立は可能か?っつーのは人生最大の課題になりそうである。

アメリカに帰ってきた彼は、2日間熱を出して寝込み、会社を休んでいた。・・・ああ、哀れや。よっぱど疲れたのね。もちろん私はぴんぴんしていたのは言うまでもない。わはは。


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第35回 ガイジンの私と移民局(その2)
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第 9回 カタカナと正しい発音
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