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  ジャングルの記念すべき21世紀の門出とともに、私のささやかなエッセイをスタートさせて頂くことになりました。留学という形でシアトルにやって来て、言葉、文化の大障壁と闘うこと1年と3ヶ月。その間には、誰でも陥るようなどん底ホームシック、なにもかもが楽しいふわふわ状態、言葉のフラストレーション大爆発、など山あり谷あり。森や丘、海や湖に囲まれながらシアトルで生活していると、日本では思いもしなかったようなことについてゆっくりと考える時間があります。そんなシアトルで考えたこと、体験したことをみなさんに毎月お届けしていきます。    
       


第9回:車を「できるだけ安く」買う


車を持つことなくアメリカに住み、近所のスーパーにちょっと買い物に行くこともできないような不自由をずっと味わってきました。それがもうすぐ2年になろうかという先日、やっと予算と希望にほぼ合った車を探し出し、購入に至りました。白のホンダ・アコード。スティック・シフト(マニュアル・トランスミッション)だけど、古い車にしてはなかなかよく走ります。

見つけたのはインターネットの中古車売買を扱うウェブサイト(www.autotrader.com)。希望の条件を入力すると、その希望にあった車が検索結果として出てきます。気に入った車があれば、直接メールを送ったり、電話をしたりすることができるようになっています。私がこのアコードを見つけてメールを送ると、5分も経たないうちに電話がかかってきたのでびっくりしました。しかも、今晩にでも見てもらいたいと言われたのです。かなり急いで売ってしまいたいという雰囲気。早速アポを取り、次の日に車を見に行きました。

当日は、売主のジェフ君と、車の名義を持っている母親のエリザベスさんがやってきました。彼は現在まだ18歳で、車を購入したときには未成年だったため、名義が母親になっているとのこと。感じの良いきちんとした感じの親子でした。当初の提示額は5000ドル。中古車などの標準的な売買価格を見積もることのできるウェブサイト(Kelly Blue Book, www.kbb.com)で調べると4360ドルとなっていました。持ち主のジェフ君の説明によると、最新のCDチェンジャーが高価だったこと、他にもいろいろとお金をかけているということでした。まずは試運転。走りはなかなか良かったのですが、5000ドルでは絶対に買わないと決めていたので、「適正価格である4360ドル以上払うつもりはない」というところから交渉をスタートしました。そして、「知人がメカニックなので今度はその知人にすべて見てもらい、それから決めても良いですか?」と言って一旦この日は終わりました。

その知人とは事前にかなり時間をかけて打ち合わせを行いました。まず、車のあちこちを見た後、私たちの間だけで小声で話すこと。こうすることで、「何か悪い部分があったのかしら?」と少し不安にさせる効果があるそうです。そして、「んー、いい車なんだけど・・・実は、3600ドルで青い色の車を売りたいという人がいるのです。そちらの方がマイレージも少し低いのですが、色はこっちの方がいいので迷っています」と、色がネックで他の安い車と迷っていることを理由に、もう少し値切ること。このように彼は、値切ることに命をかけているのか、と思われるほど細かく戦略を練ってくれました。

さて、2度目のアポ当日。ジェフ君がキャンプに行っていたため、母親のエリザベスさんが(ジェフの)父親とともにやってきました。作戦どおりに私は女優になり「ん〜いいんだけどな・・・3600ドルなら買うのですが・・・」とあらかじめ考えておいたセリフを言いました。しかし、エリザベスさんも少しも引く気配をみせず、「んー、4200ドルまでだったら、ジェフも負けると思うわよ。それより下は難しいんじゃないかしら。どちらにしろ、彼に聞いてみてからね」と強気の発言。我々はそこで、「では、どちらにしろ彼がキャンプから帰ってくる月曜まで待とう」と言って2度目の交渉を終えました。

その日のうちにエリザベスさんから電話があり、「他の車をまだ買ってしまわないでね。ジェフには必ず帰ってきたら連絡させるから。こちらも、4300ドルで買うといっている人がいるのよ。でも、あなた方、とてもいい人だし、是非あなたがたに売りたいのよ」と言ってきました。この時点で私たちは、これは3800ドルくらいまでいけるという確信を持ちました。4300ドルで売りたい人がいるというのは少し空々しい感じの嘘だということがすぐに分かったのです。何故なら、私だったら4300ドルで買ってくれる人に売ってしまうでしょうから。相手もゲームをしかけてきたということです。

さて、ジェフ君が帰ってくる月曜日を待たず、他の車も見に行きました。もちろん、他の車が気に入ればそちらを先に買ってしまうということもあるという前提で。いろいろ見た結果、やはりジェフ君のアコードが値段と質の両面からみて最も良いという結論に達しました。そして月曜日、ジェフ君に電話し、3800ドルでどうですか?と言ってみました。すると、かれも母親に教えられたのか、「他に4300ドルで買いたい人がいるのでちょっと待って」とゲームをしかけてきました。しかし、これが嘘であることは、1) それが本当ならとっくにそちらに売っているはずだ、2) 早く売りたがっているのならなおさら4300ドルで買いたいと言っている人に売っているはずだ、という2点からほぼ確実だと思われたので、「分かりました。では、そちらと話してください」ときっぱり言い、電話を切りました。

その日のうちにまたジェフ君から電話がかかってきて、3900ドルだったら売ってもいい、と言ってきました。「しめた」やはり、4300ドルの人は嘘だったよう。しかし、もし3800ドルで買いたいということであれば、CDチェンジャーは取り外すと言ってきました。ここでCDチェンジャーと100ドルを天秤にかけ、結局3900ドルで買うことに同意。最後でジェフ君の策略にちょっぴりはまってしまったのですが、まあまあ目標に近い額で買うことができ満足しました。

今回の件で私が思ったことは、アメリカではいかにしてできるだけ物を安く買うか、とことん策略を練るということです。また、彼らはその過程を楽しんでいるようでもあります。そのためにはいくらかの労力も必要になりますが・・・。今回、他人に作戦を練ってもらった私も、次回からは自分でやろうと決心しました。みなさんも、知恵を練って少しでもお金をセーブすることを楽しんでみては?


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