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  ジャングルの記念すべき21世紀の門出とともに、私のささやかなエッセイをスタートさせて頂くことになりました。留学という形でシアトルにやって来て、言葉、文化の大障壁と闘うこと1年と3ヶ月。その間には、誰でも陥るようなどん底ホームシック、なにもかもが楽しいふわふわ状態、言葉のフラストレーション大爆発、など山あり谷あり。森や丘、海や湖に囲まれながらシアトルで生活していると、日本では思いもしなかったようなことについてゆっくりと考える時間があります。そんなシアトルで考えたこと、体験したことをみなさんに毎月お届けしていきます。    
       


第2回 : アメリカ人の男はロマンティスト?


Mistletoe(ミスルトゥ)という植物を知っていますか?このミスルトゥ、ポプラなど他の木に寄生してその栄養を吸収して生きるのですが、子宝を授ける不思議なパワーがあるという言い伝えがあります。クリスマスにこれを掲げると、その下にいるカップルはキスをしないといけないと言われているミスルトゥ。これにまつわるロマンティックなお話をしましょう。

クリスマスの近いある寒い朝、オレゴン州にあるWilliamsville(ウィリアムズビル)という小さな山あいの村に住む心優しい青年Neil(ニール)は、いつものように仕事に向かって赤いトラックを運転し、同じ職場で働くSarah(サラ)を迎えに行きました。Sarahは2ヶ月ほど前に彼の職場で働くようになった女性で、いつも明るく優しい彼女の微笑みに、職場の人間関係などに疲れたNeilの心はいつも癒されるのでした。いつしかお互い惹かれあうようになっていましたが、過去の恋愛経験から少し臆病になっていた2人は、お互い意思表示することもなく、ただ時間だけが過ぎて行きました。

彼女の小さなトレイラーハウスに着くと、入り口のステップのところで、小柄な彼女が黒い髪を揺らしながら彼に向って一生懸命手を振っていました。「おはよう!」そう言って、Sarahは車に乗りこみました。2人が、仕事場へ向う途中で小さな集落を通りかかったとき、7、8歳ぐらいの少年が、擦り切れた半パンに薄汚れたティーシャツ姿で道路脇に立ち、こちらに向って何かを言おうとしているのが目に入りました。Neilは慌ててキキーッ、と音を立てながらトラックを停車し、素早くドアをあけ車の外に出ました。その少年は、伸びっぱなしの薄茶色の髪を片方の手でこすりながら、真ん丸いエメラルドグリーンの目でNeilをじっと見つめ、言いました。「このミスルトゥを50セントで買わないかい?」Neilが目を落とすと、彼のもう一つの手には小さなミスルトゥが握られていました。Sarahは車を降り少し距離を置いて少年とNeilの様子をうかがっていました。

この寒い中、少年はコートも着ずに、50セントを手に入れるためにここにずっと立っている、そんな健気な少年に向って、Neilは腰を屈めると、彼の目をじっと見ながら片方の手でジーンズの後ろのポケットを探り1ドル札を見つけると、少年に手渡しながらこう言いました。「おつりはいいよ。」彼がそう言い終わるや否や、少年の顔はみるみると明るい表情に変わり、まるでクリスマスプレゼントを開けるとずっとずっと欲しかったお目当てのおもちゃが入っていたときのような目をしたのです。その顔を見たとき、NeilとSarahは少年と同じ気持ちになりました。それは、少年の喜びが自分の幸せとして感じられた瞬間でした。たった1ドルが3人の気持ちを柔らかく、暖かく溶かしたのです。

その日の夜、NeilはSarahを誘って近くの山頂にある池までドライブに行きました。山頂に着き車を降りると、Neilは車の天窓を開けて、Sarahに「見てごらん」と言いました。言われた通り夜空を見上げたSarahは、まるで星の入ったばけつをひっくり返したような無数の星屑を見て驚きました。都会で育ったSarahは、こんな数の星を生まれてはじめて見たのです。2人は言葉を失い、押し黙ったまま首が痛くなるほど上を見上げていました。何10分そうしていたか分かりません。突然Neilは、その朝少年から買ったミスルトゥをSarahと彼の頭の上に掲げました。そして、2人は…

ああ、なんとロマンティックなお話でしょう。お楽しみ頂けましたか?これは、去年から今年のお正月にかけて、シアトルを訪れていた友人の実話です。その後、何度か波風はあったものの、今はラブラブだという電話報告も来ました。彼女もいろいろ悲しい恋愛経験をしているので、彼女のハッピーなお話を聞いて、私もとっても幸せな気持ちになりました。しかし…。アメリカ人のあまりのロマンティックさに、かすかな「さむいぼ(標準語では鳥肌といいます)」感を覚えたことも否めないのです。私は、どうもこの手の話しに涙する一方で、さむいぼ反応が出るのです。古いアメリカ映画などを見ると、「君の瞳に乾杯」なんて肌寒いセリフがよく出てきます。くさいセリフもアメリカ人がさらっと言ってのけると様になる場合もあります。ですが、あれは映画の世界。はたして実生活でもアメリカ人はみなロマンティックなのか…?と思っている方たちのために言います。結論はNo。このミスルトゥ・ストーリーをずっと聞いていた私の彼は、
"I didn't go to a romantic school, so I don't know how to be romantic. Haha…"
(ロマンティック学校に通わなかったから、どうやってロマンティックに振舞うのか知らないよ!はっはっは)
と一言。ああ、そんな冗談一言で私のロマンティック人生は終わってしまうのか…「そりゃあ、ちょっとさむいぼも出るけど、やっぱりちょっとはロマンティックしてみたいのに!」と心の中で叫び、
"I will get you an application form to a romantic school!"
(ロマンティック学校の入学願書を手に入れてあげるわよ!)
と言い返すのがせいいっぱいの私でした。


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