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ちゃんぽんカルチャ〜ショ〜ック
ちゃんぽんカルチャ〜ショ〜ック
    
 1996年にシアトルに引っ越してきたが、まだ「アメリカはこれだから・・・」と、外からアメリカを見ている。アメリカ人の夫も、「日本だとこうなのに〜」という妻の愚痴にも慣れた様子。もちろん、たまには家庭内日米摩擦が生じることもあるが、能天気で幸せな、2児の母である。  
    


第5回 : ヘルメットをかぶるバックシート・ドライバー


男と女が一緒に車に乗ることになったら、男が運転するという常識が世の中には存在するように思う。しかし、我が家にとってそれは非常識である。

まず、夫は運転が嫌いだ。夫婦で日本に住んでいた間に国内で引っ越しをした時も、重たい布団を肩に担いで自転車をこいだ男である。通りかかった子供が「お兄ちゃん、すごーい」と称賛したらしく、今でも自慢話に持ち上がる。
今はアメリカ人として生きている彼だが、前世は絶対に日本人で、姫を籠に入れて担いでいたに違いない。

車社会アメリカで車を嫌がる男もかわいそうだが、運転好きの私にとってはありがたい。そして、私は夫より運転がうまいと自負している。だから、たまに彼が運転する車の助手席に座ると、「今、車線変更したら?」とか「スピードが遅いと周りに迷惑よ」とか非常にうるさい。こういった私のように、運転手に "助言"をいちいち与える人を英語で"バックシート・ドライバー"と言う。実際に運転をしていないくせに、後部座席からあーだこーだと運転を仕切りたがるやつ。まさに私のことだ。夏の夜、幸せに眠っている最中に耳元をブ〜ンと飛んでくる蚊以上にうざったいことだろう。

しかし、夫も立派な蚊、いやバックシート・ドライバーである。会社と家の周辺など、決まった場所しか運転をしないためシアトルの地理にめっぽう弱い夫はほぼ常に迷子状態で、口は寡黙に「あなたについて行きます」状態なのだが、その代わりに "体で" 文句を言うのである。
赤信号が近づくと、白々しいほど大げさにダッシュボードに両手をついて体を硬直させる。前方の車との車間距離が短すぎると感じる時は、背中はベッタリ座席にくっつけ、両手は横に大きく広げドアやひじかけを握りしめ、両足はダッシュボードをガシッと踏む。
いくら現世をアメリカ人として生きているにしても、これらのジェスチャーは大げさ過ぎて、非常にうざいのである。安眠を邪魔する蚊なら叩き落とせばそれで事なきを得るが、夫はそうもいかずに、車を運転する私の右半分の視界の中で、今日も見事にバックシート・ドライバーを務めるのだった。

車内にもブレーキ・ランプがあれば、ブレーキがかかっていることが同乗者に証明できて安心させられるのにと思う。それがまだ(?)現実になっていない今、夫には車内でヘルメットをかぶって目をつぶってもらうのが最善策だろう(その前に、スピードを少しは落とした方がいい?)。

ヘルメットといえば、日本でヘルメットをかぶる人は自転車通学の学生、バイクに乗ったピザ配達人、道路工事のお兄ちゃん、工場で働くお父さん、そしてじゃんけんで負けた人ぐらいだろう(ゲームの名前は「あっち向いてほい」だったかな・・・)。そんな日本文化の中、仮面ライダーのようなテカテカのヘルメットをかぶり、田んぼ道を自転車でシャーシャーと走り回っていたのは紛れもなく私の夫だった。まるで見当違いの競輪選手のようで、当初私は恥ずかしい思いをしたものだ。しかし、補助輪を付けた保育園児だろうが、毎日生卵を飲んでる元気な筋肉マン兄ちゃんだろうが、自転車を乗るにはヘルメットをかぶるという常識が全国民に染み渡っているアメリカに来てから、私の考え方も180度変わった。日本人はなぜヘルメットをかぶらないのかと、逆にそう思うようになった。人ごみあり、ママチャリ集団あり、ごみの山あり、富士山あり(関係ない)、まるで障害物競争の中を突っ切るような日本の自転車社会。ぜひヘルメットをかぶろうじゃありませんか。

ここ数年で日本でもチャイルド・シートが普及してきたように、自転車のヘルメットも普及してくれたらいい。まさに日本人お得意の「みんなでかぶれば変じゃない」ではないだろうか。


(2005年7月)


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最終回 さらばシアトル!
第16回 アメリカの長〜い夏休み
第15回 結婚式とお葬式
第14回 観光したい!
第13回 泥棒御用
第12回 アメリカのタブー、夫婦のタブー
第11回 アメリカのトイレ分析
第10回 カミングアウトしまっせ
第 9回 私の決意−人種差別を体験して
第 8回 薬と予防接種はスーパーで
第 7回 何かをかき立ててしまう男
第 6回 すっぽんぽん
第 5回 ヘルメットをかぶるバックシート・ドライバー
第 4回 食文化ショック
第 3回 作法と習慣 - ご飯は左?それとも右?
第 2回 言語習得法
第 1回 初めてのアメリカの味
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