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ちゃんぽんカルチャ〜ショ〜ック
ちゃんぽんカルチャ〜ショ〜ック
    
 1996年にシアトルに引っ越してきたが、まだ「アメリカはこれだから・・・」と、外からアメリカを見ている。アメリカ人の夫も、「日本だとこうなのに〜」という妻の愚痴にも慣れた様子。もちろん、たまには家庭内日米摩擦が生じることもあるが、能天気で幸せな、2児の母である。  
    


第4回 : 食文化ショック


■アメリカの食生活

最近暑くなって来たせいもあり、たまにはアイスクリーム屋さんに行ってみようとバスキンロビンズに行った。平凡にバニラ・アイスクリームが一番好きなせいもあり、スーパーで買った方が安くたくさん食べられるため(基本的にせこい)わざわざアイスクリーム屋に行くということはあまりしないことから、『バスキンロビンズ』 と 『31アイスクリーム』 は別々のチェーン店なんだと、去年まで信じていた。

そんな私を親に持つのだから当然といえば当然だが、我が家の子供たちはアイスクリーム屋に滅多に連れて行ってもらえないこともあり、入店する前からよだれタラタラ大喜び。そんな子達と行くと特別なデートみたいで、さらに嬉しくなってしまう。

選び切れないほどたくさんの種類があるのに、やっぱり母に似て無難派かな、子供達も結局はバニラを選んでいるところがちと笑える。しかし、それでも家で食べるのとは違い、店で食べるともっと美味しく感じてしまい、子供たちと自然と目が合って「うふふ」とにやけてしまったりする。

そんな至福の時を過ごす私達の近くのテーブルに、いかにもティーンで母になりましたという感じのアメリカ人母子が2組やってきた。

ここでちょっとご注意願いたい。ティーンでママになるのがいけないと言っているのではない。若さをねたんでいるのでもない。「若いママは体力もあるし、子供と友達のような関係になれていいなぁ」と思ったりもする。しかーし!いくらルンルン仲良し親子と言ったって、まだ首も座っていない赤ちゃんにアイスクリームを食べさせるのはどうなるのだろう?ママのおっぱいさえ飲んでいれば生きて行けるという時期に、「牛さんのミルクにたっぷり砂糖の入ったもんを食べてええんかい!?一体全体どこで育児教育を受けたんや」と聞きたい衝動にかられた。無意識のうちに目が釘付けになってこのグループをジーッと見ていたようで、1人のママと目が合ってしまった。
「乳児にアイスクリームは良くないよ」
喉まで出かかっていたその言葉を発さず、
「あはっ、かわいいですね」
・・・と言ってしまった自分が情けない。その母親達の会話の中にののしりに近い下品な言葉が頻繁に登場するのを聞いて、怖かったというのが本音かも。

それから「他人の子供のことだし、アメリカ人は小さい頃から甘い物を食べてるからいいや、私には関係ないや」 と自分の中で解決しようとしたが、後からよくよく考えると、この赤ちゃんたちが成長して我が子とどこかで出会うことがあるかもしれない。こういう所で問題を放置しておく私こそが社会問題の原因の1つではないかと、後から落ち込んでしまった。

生後まだ1歳に満たない子供に、フレンチ・フライを与えるアメリカ人がいる。ポテトとケチャップには野菜が含まれているからというのがその理由だ。アメリカの食生活が、私が思う常識範囲を超えていると実感したのは、学生時代にホームステイでお世話になった家庭での夕食が最初だった。毎晩飽きもせず、鶏→牛→豚→鶏→牛→豚をただ焼くだけのメニューが繰り返され、2ヶ月の滞在中に1度もまな板を見たことがなく、その上で野菜を切るという調理も行われない。肉とパンとジュースの夕食が終わると、ポップコーンがおやつとして出され、まだ小学校低学年の娘にアイスクリームを食べることを強制していた。いくら甘いもの好きの子供でも、毎晩となるとさすがに耐えられないようで「食べたくない」と母に訴えても、寝付きが悪くなるからという理由で毎晩食べさせられたのだ。ホストマザーも、同居していたそのお姉さんも、日本では力士に相当するほどの肥満だったから、スリムでかわいいこの娘の将来の体型は目に見えていた。この娘が大きくなりやがて母になった時、冒頭のアイスクリーム屋の親子のように、暑い日には乳飲み子と一緒にアイスクリームを食べるのだろうか・・・。


■夫の日本でのカルチャーショック

久しぶりに受けたカルチャー・ショックならぬ食文化ショックについて夫に話していた時、彼が昔、日本で受けた食文化ショック話をふと思い出した。

私の夫は独身時代に日本へ引越し、1人でスーパーへ買い物に行った際、何が何やらさっぱり分からない物が多すぎて悩んだらしい。そこで彼の奇妙な思考回路がビビっと作動した。
「子供と老人が食べる物は美味しくて安いに違いない」
納得できるような、腑に落ちないような理論だが、彼はそれを信じて、子供がお母さんに「買って」とおねだりしていた物を買って帰ったそうだ。それはガラス瓶に入った黒くドロッとした物体だった。家に帰り早速一口食べてみて、
「な、なんやこれはー、オエーッ、ゲーッ」
と吐き出し、即ごみ箱へ。彼が買って食べたもの、それは日本人の私でさえ白いご飯がなければ食べたくないと思う、のりの佃煮だった。なんと古典的な喜劇だろう。チャップリンのような無声映画でも十分楽しめる内容ではないか。本当に食べられる物でまだ良かったものの、見た目からして不気味な物をよくもまぁ食べる気になったなと感心する。子供が選ぶ物だからチョコレートのように甘く美味しい物とでも思ったのだろうか?イチゴに塗って食べたら良かったのにと意地悪な私は1人勝手に想像しては笑ってしまうのだが、彼にとっては想像以上のショックだったようだ。メキシコ料理のような豆料理を期待してあんこを初めて食べた時も、腹が立つほどまずかったらしい。「名前も◯んこと似すぎている」と幼稚園レベルの文句をつけて、今でも決して口にしない。そういえば、「豆がどうして甘いんだ」とあんこに怒ったメキシコ人の友達もいた。ピザにとうもろこしや焼きそばがトッピングされているのも、夫にはどうしても許せないらしい。マヨネーズがかかっているピザを口にした時は、あまりのまずさに目に涙をうっすらと浮かべていた。懐石料理で、奇麗な花形をした緑の物を丸ごと口に入れたのも、今となっては楽しい昔話だ。全部飲み込んでいたら、目からはうっすらどころか滝のように涙が溢れ出たことだろう。なぜならそれはワサビだったのだから。

まだ日本食に慣れていなかった時の彼と一緒に食事をした日本人も、気を抜けたものじゃない。このワサビ事件は私と出会う前の話だったのだが、他にもいろいろと彼にまつわる珍事を聞かされたものだ。日本に越した直後からお世話になっていた人がある日、日本のみかんを彼にあげたところ、いきなり彼が皮ごとガブッと口に入れたから
「あーっ、それは皮を剥いて食べるんだよっ!」
と焦って叫んだらしい。彼は、オレンジのように皮が硬く剥きにくいと思って、野性的に歯で剥こうとしたのだが、そんな下品な食べ方をしたばっかりに、純粋な日本人は「アメリカ人はオレンジも皮ごと食べる」と勘違いしたかもしれない。アメリカ人は桃もぶどうも皮ごと食べるので、そう信じてしまってもおかしくない。

しかし、果物の皮には実にはないビタミンが含まれているので、妊婦にはかえって重要なのだそうだ。栄養学を勉強しているアメリカ人の妊婦が、オレンジの皮の内側の白い部分を一生懸命食べていたのが印象に残っている。しかし、アメリカで妊娠した時に、お寿司など生魚は避けるようにと産婦人科医に言われた時は驚いた。インドネシアで出会った女性は、妊娠中はドリアンを食べないと言っていた。イタリアでは、イタリアン・パセリを食べると流産を引き起こすと言われているそうだ。

また、野菜は体に良いという認識が世界で共通しているが、夫が作ったサラダに生のマッシュルームとさやえんどうが乗っているのを初めて見た時、「こいつは火を使って調理をしない類人猿か」と思ったものだ。しかし、アメリカではブロッコリーもほうれん草も生で食べることがあると、後から知って安心した。

こんな風にいろいろな違いを列挙してみると、食文化ショックが生じるのも当たり前のことだと納得できる。しかし、乳児にアイスクリームを与えるのはやっぱり同じ人間として体に良くないと思う。気弱い日本人丸出しの私は、ますますバスキン・ロビンズに行かなくなった。この夏も家でバニラ・アイスクリームをちびちび食べてるのだろうか。は〜。

(2005年6月)


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第16回 アメリカの長〜い夏休み
第15回 結婚式とお葬式
第14回 観光したい!
第13回 泥棒御用
第12回 アメリカのタブー、夫婦のタブー
第11回 アメリカのトイレ分析
第10回 カミングアウトしまっせ
第 9回 私の決意−人種差別を体験して
第 8回 薬と予防接種はスーパーで
第 7回 何かをかき立ててしまう男
第 6回 すっぽんぽん
第 5回 ヘルメットをかぶるバックシート・ドライバー
第 4回 食文化ショック
第 3回 作法と習慣 - ご飯は左?それとも右?
第 2回 言語習得法
第 1回 初めてのアメリカの味
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