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シアトルのパブリック・アートの歴史:公共空間の芸術

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シアトル・センター『Sonic Bloom』

シアトルは、全米でも先駆けて市の予算の一部を芸術に充てることを決定した都市の一つです。公共の場に展示されるパブリック・アートも充実しており、市内各地には450点を超える作品が設置され、訪れる人々を楽しませています。

シアトルがパブリック・アートの充実に取り組み始めたのは1950年代のこと。文化コミュニティの将来的な発展に関心を持つ熱心な芸術愛好家たちが「Allied Arts of Seattle」というグループを立ち上げ、市議会に働きかけました。その結果、1955年にはアートを専門とする委員会である「Municipal Arts Commission」が発足したのです。

発足後まもなく、同委員会は市の予算の2%をアートの購入に充てること、年に一度アート・フェスティバルを開催すること、世界万国博覧会を主催すること、シアトル・シンフォニーに公的資金を提供すること、バレエとオペラのカンパニーを新たに作ること、電線を地中に埋めて景観を改善すること、史跡を保存すること、街路樹を増やすことなどを掲げた基本計画を策定しました。

1962年の世界万国博覧会 『Century 21』の会場の跡地は、多目的施設が揃ったシアトル・センターとなりました。

これが1962年の世界万国博覧会 『Century 21』 開催につながり、シアトルへ多数の観光客を誘致しただけでなく、アメリカ北西部のアートやアーティストを称える場としても成功したと言われています。

その後、シアトルではますますアートへの取り組みが積極的に行われました。アートに対する支援の強化、都市の再開発、経済発展、環境保護などを目的に、アートを都市デザインと結びつけることが考え始められたのも、その頃です。やがて 『Allied Arts of Seattle』 の当時の代表、ポール・シェル氏の働きかけにより、1971年に市議会条例でアートを扱う部署 『Seattle Arts Commission』 を設立することが決定しました。

1971年といえば、米国議会が超音速旅客機(SST)計画の取り消しを決定し、さらに民間航空機の売り上げが激しく落ち込んだことも重なって、ボーイング社が大きな打撃を受けた年。これは後に Boeing Bust と呼ばれる、歴史に残る出来事となりましたが、シアトル・タイムズによると、同社は1970年に3万5000人、1971年に1万5000人の合計5万人を解雇し、ワシントン州の経済に大きな打撃を与えました。

パイク・プレース・マーケット『Song of the Earth』 曽我部あきさん作

「そのような状況の中でスタートしたパブリック・アート・プログラムには、アートで街を活気づけるという意味も込められていました」と語るのは、2011年に同プログラムのディレクターを務めていたルリ・ヤンポリスキーさん。その一環で、当時のウェス・ウルマン市長の支援のもとに始まったアート・フェスティバルは、後に『Bumbershoot』と名称を変更し、シアトル最大の芸術祭として続いています。

『Allied Arts of Seattle』 は1973年に 「1%アート条例」 を提案し、市の設備改良資金の1%をその地区の美化に役立つパブリック・アートの購入に充てること、そしてその資金を 『Seattle Arts Commission』 が管理する新しい『Municipal Arts Fund』に充てることを求めました。Historylink.org によると、この 「1%アート条例」 はその年に可決され、シアトルはアートに充てる予算プログラムを早くに作った都市の一つとなりました。その後、同様のプログラムがたくさんの都市で実施されるようになります。

バラード・ロックス『Salmon Waves』

『Seattle Art Commission』 は、2003年に現在の 『The Seattle Office of Arts & Culture』 に名称を変更し、アートを購入・設置するだけでなく、点検や修理も定期的に行っているほか、芸術団体やアーティストを支援し、アートを通した教育にも力を入れています。

恒久的に設置されている作品はさまざまなアーティストが手がけていますが、それ以外のアートはほとんどがノースウエスト出身のアーティストの作品とのこと。2010年時点で恒久的に設置されている作品は350点以上、移動展示可能な作品は2,600点以上でしたが、2017年時点で恒久的に設置されている作品は450点以上、移動展示可能な作品は3,000点以上に及んでいます。

シアトル市は、パブリック・アートをリストした PDF の地図とアプリの解説を用意しています。誰でもダウンロードできるので、ぜひご覧ください。

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