シアトルで活躍!日本人シェフ: 『I LOVE SOUZAI』 興十郎(おきじゅうろう)さん 「ローカルの食材をとりいれ、珍しい組み合わせの惣菜を開発していきたい」

I LOVE SOUZAI

興十郎(おきじゅうろう)略歴:
1958年、奄美大島生まれ。高校卒業後、東京の中央工学校に入学し、役者を目指すが、アルバイトでやっていた料理の方が向いていると確信し、ホテルパインヒルに入社、6店舗の総料理長となる。1998年に老舗料理店『柿安』に現場監督として入社し、最終的には柿安本店東京本部執行役員商品部総料理長となり、2001年から3年連続で「日経レストランシェフ」が選ぶトップ10シェフの一人に選ばれた。2016年に料理アドバイザーとして独立。セブンイレブンホールディングスなどと人気商品を開発しているほか、2015年9月からベルビュー市の I LOVE SUSHI で料理長、レストラン型惣菜の開発を行っている。

I LOVE SOUZAI | I LOVE SUSHI ON LAKE BELLEVUE
【住所】 23 Lake Bellevue Drive, Bellevue(地図
【公式サイト】ilovesouzai.com | ilovesushi.com

奄美大島で10人兄弟姉妹の10番目として生まれ育った興さんは、幼い頃から料理好き。「男子厨房にはいるべからず」という文化が根強かった時代でしたが、気にせず台所で卵焼きなどを作っては、島でも料理上手として引っ張りだこだった母親に怒られていたそう。料理の道に入ったのは、高校時代から生活のためにアルバイトでやっていた料理をほめられ、喫茶店をまかされたりするようになったことがきっかけ。ふとしたことからどんどん人がつながり、あれよあれよというまに道が開け、ホテルパインヒルの総料理長に就任しました。

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その頃、フランスで修行する機会に恵まれ、本物の野菜と出会い、ますます料理の幅が広がったそう。食材や料理を食べると、「ああ、これはこうしてこうしてこうしたらいいんだな」とひらめくようになり、まるで誰かに操られるかのように、体が勝手に動いて料理を作る日々が2年ほど続いたと、当時を振り返ります。

「楽しくて楽しくて、終わってほしくないという幸福感に満たされていました」。

「自分は料理をして奉仕するために生まれてきたんだ」と感じた興さんは、老舗料理店『柿安』に現場監督として入社し、最終的には柿安本店東京本部執行役員商品部総料理長として、さまざまな料理を手がけ、惣菜をデパ地下や駅中、ショッピングモールでプロデュースするようになりました。

しかし、日本の人口減少にともない、外食産業も内食産業も縮小傾向にあることから、10兆円市場に成長した惣菜の産業も限界が見えてきたと感じ、長年一緒に働いてきた斎藤佳伸さんと料理をプロデュースする会社を立ち上げ、セブンイレブンホールディングスなどと人気商品を開発する仕事を請け負い、世界を飛び回っています。同時に、「海外で惣菜がどこまで受けるのか挑戦してみよう」と、2015年にベルビュー市の 『I LOVE SUSHI』 へ。総料理長として厨房の監督をまかされ、今年7月からはレストラン内で販売する惣菜 『I LOVE SOUZAI』 のプロデュースも開始しました。

I LOVE SOUZAI

常に約10種類を量り売りで購入できる惣菜は、ローカルの旬の食材をふんだんに使った、彩りもきれいなものばかり。秋はナスやカボチャなどの「なりもの」や鯖、冬はニンジンや大根、ごぼうなど根菜を使った惣菜が並びます。現時点で買物客の9割は日本人と日系人、1割がアメリカ人で、塩麹を使った蒸し鶏とザーサイを使った一品($4.25/lb)と、いろいろなおかずが少しずつ入った幕の内弁当($23)が人気が高いそう。

食材から見えるシアトルは、四季がとてもはっきりしているところ。果物の種類が多くて美味しく、日本では「ハヤトウリ」と呼ばれる “Chayote” といった珍しい食材もあり、食べ方を研究するのが本当に楽しいそうです。

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「食材の旬が短く、旬だと思ったら数週間のうちに味が変わってしまうのも面白い。日本では有機とそうでないものとは味や柔らかさに大差ないですが、こちらでは有機のほうが断然柔らかく、野菜には日本のものよりパワーがあります。野菜に命がありますから、あれこれ加えて味を作るのではなく、食材の味をできるだけそのままにするよう工夫していきたい」。

今後はさらにローカルの食材をとりいれ、珍しい組み合わせを開発していきたいとのこと。「美味しい!という一言が嬉しいです」。研究熱心でオープンマインドな興さんのこれからの仕掛けが楽しみです。

掲載:2017年10月 写真:編集部 & I LOVE SUSHI